eぶらあぼ 2015.2月号
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56リプキン・カルテットカリスマ・チェリストが切り開く新時代のクァルテット文:渡辺謙太郎めぐろパーシモンホール 「未来の音シリーズ」 Vol.21 マーク・シューマン(チェロ)ドイツと日本を結ぶ新鋭チェリスト文:笹田和人3/1(日)14:00 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール問 渋谷区文化総合センター大和田03-3464-3252 http://www.shibu-cul.jp2/21(土)15:00 めぐろパーシモンホール(小)問 めぐろパーシモンホール03-5701-2904/コンサートイマジン03-3235-3777http://www.persimmon.or.jp 近年、公演チラシなどで「新境地」や「新世界」といった宣伝文句を目にするが、「“彼”が率いるクァルテット」と聞けば否応なく期待してしまうし、3月の公演ではそれが必ずや確信に変わることだろう。その“彼”こそ、イスラエルの個性派チェリスト、ガブリエル・リプキンだ。彼の呼びかけで結成されたリプキン・カルテットは、メンバーの人選や試演に長時間を費やし、ソリスティックな実力と個性を備えた4人で構成されている。2008/09シーズンより満を持して始動。ヨーロッパ・デビューは大きな話題を呼び、現在では、世界で注目を浴びているクァルテットの一つとなった。 日本デビューとなる今回の公演では、ブロッホ「夜」、ドヴォルザーク「アメリカ」、ストラヴィンスキー「3つの小品」、シューベルト「死と乙女」を演奏。いずれも瑞々しさと老獪さが絶妙に絡み合っており、クァルテットの力量や魅力を知るには格好の名曲と言える。なかでも楽しみなのが、「死と乙女」。まるで死神が近づいてくるような重々しい これからの“時代を響かせる若手演奏家”にスポットをあてる、めぐろパーシモンホールの「未来の音シリーズ」。その第12弾に、ドイツ人ヴァイオリニストの父と日本人ピアニストの母の豊かな感性を受け継ぎ、しなやかな技巧と美しい音色で「ドイツと日本、両国を結ぶチェロ界期待の新鋭」と目されているマーク・シューマンが登場する。 シューマンは1988年、ケルン生まれ。7歳にして全ドイツ学生音楽コンクール、11歳の時にはオーストリアのチェロ・ジュニア国際コンクールで優勝し、オーケストラとサン=サーンスの協奏曲で共演。2006年にはケルン国営放送主催のコンクールで優勝し、翌07年にはスロヴァキア・フィルの来日ツアーのソリストとして、わが国に初お目見えした。同年にはヴァイオリニストの兄エリックらと共に「シューマン・カルテット」を結成。難関として知られるボ主題で編まれた第2楽章の変奏曲を、彼らがどのように解釈するかに注目だ。 かつて筆者が行ったインタビューで、「協奏曲は指揮者やオーケストラとの“対話”、ソロは“自分自身を見つめルドー国際弦楽四重奏コンクールを制するなど、室内楽の分野でも注目されている。 ステージでは、まず“チェリストの聖書”とも呼ばれる大バッハの無伴奏組曲から、第6番を披露。そして、国際的に活躍するピアノの名手・干野宜大(ほしの・たかひろ)の共演を得て、ソナタ第3番と「ヘンデル『ユダ・マカベウス』の『見よ勇者は帰る』の主題による12の変奏曲」と、ベートーヴェンの手になる2つのチェロのための佳品をメインに。ここへ、シューマンの「幻想小曲集」(作品73)を添えた。シューマンが操るチェロは、1710年製作の「カルロ・ジュゼッペ・テストーレ」。俊英によって翼を得た銘器は、壮大な響きの宇宙を駆け巡る。直す行為”、そして室内楽は親密な“恋愛”のようです」と語っていたリプキン。私たちの想像を遥かに超えた新鮮なアプローチを期待しながら、その感動を全身で満喫したい。 ©Donald Woodrow

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