eぶらあぼ 2015.2月号
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55宇野功芳企画 第4弾 佐藤久成 ヴァイオリン・リサイタル2/22(日) 14:00 東京文化会館(小)問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp小林研一郎(指揮) 大阪フィルハーモニー交響楽団2/28(土)15:00 ザ・シンフォニーホール問 ザ・シンフォニーチケットセンター06-6453-2333 http://www.asahi.co.jp/symphony希有な感性と独創的なプログラム取材・文:渡辺謙太郎Interview佐藤久ひさや成(ヴァイオリン) 現在、“鬼才”のニックネームが日本で最も似合うヴァイオリニストの一人、佐藤久成。ヨーロッパで長く活躍し、2003年に帰国した彼は、濃厚な音色と伸縮自在の歌い回しや、知られざる作曲家の作品に光をあてる独創的な活動で注目を集めてきた。近年はその才能を絶賛する音楽評論家・宇野功芳とのコラボで、演奏会や録音を多数実現させているが、宇野の企画によるこのリサイタル・シリーズも今回で4回目を迎える。プログラムは、有名作品から珍しい作品まで、あいかわらずバラエティに富んだ内容だ。 「モーツァルトの2つのソナタ(K.378&526)とバルトークの『ルーマニア民族舞曲』は、宇野先生のリクエストもあって選びました。先生は僕が無名の頃からずっと応援してくださっている“神様”のような方。ワルターやフルトヴェングラーをはじめとした往年の巨匠や、僕の音楽性に合った現代演奏家を色々紹介してくださるので、とても刺激になっています」 アメリカ・オルガニスト協会の創設者フス、ラフマニノフやスクリャービンと同時期のロシアで活躍したグリエール、J.S.バッハ「G線上のアリア」の編曲者として知られるウィルヘルミなど、今回も知られざる作曲家の真価を問う。 「東京芸大を卒業して、渡欧した頃から絶版楽譜の蒐集にのめりこむようになりました。知られざる作曲家に光をあてることで、有名作曲家の“点”として捉えられることが多い音楽史が“線”として繋がり、“面”として広がっていく。それに無名な作品だからこそ、一から独力で取り組めるので、充実感が格別なのです」 日本を代表するピアニスト、杉谷昭子と初共演するのも聴きどころだ。 「クラウディオ・アラウの最後のお弟子さんだった杉谷さんは、ずっと共演したかったピアニストの一人。先日プログラムをお送りしたら、『私のために選曲してくれたのかしら、と思うほど気に入りました』と喜ばれました。僕の音楽の基本にあるのは旋律よりも和声。杉谷さんは、新しい解釈や即興のインスピレーションを沢山与えてくださると思うので、お会いするのが本当に楽しみです」 今回の公演と同時期に新譜の発表を控えていたり、その約1週間後に小林研一郎指揮・大阪フィルとの共演でチャイコフスキーの協奏曲を弾いたりと、充実した日々が続く佐藤。“鬼才”の躍進は2015年も止まりそうにない。3/3(火)18:30 日経ホール問 日経ミューズサロン事務局 03-3943-7066 http://www.nikkei-hall.com第434回 日経ミューズサロン小澤真智子(ヴァイオリン) NYアーバン・タンゴ・トリオ若きヴァーチュオーゾたちが誘う妖しくも美しい世界文:藤本史昭左より:小澤真智子/ペドロ・ジラウド/アドリアン・エンリケス オーケストラのコンサートマスターを務めたかと思えば、ライヴハウスに出現して強力な即興演奏を繰り広げ、さらにはそのステージでタップダンスまで披露する…。この旺盛果敢な表現欲求はどこからくるのだろう。 小澤真智子。その脱ジャンル的ボーダーレスな活動は、彼女が拠点とするニューヨークの相貌をまさに映し出したもの、といっていいのかもしれない。そんな小澤が率いるNYアーバン・タンゴ・トリオが、日経ミューズサロンに登場する。メンバーはアドリアン・エンリケス(ピアノ)とペドロ・ジラウド(ベース)。スタンダードからコンテンポラリーまで、タンゴの新たな可能性を追求するユニットとして、デビュー直後から高い評価を得てきたこのトリオ。ある時はスタイリッシュに、またある時はむせ返るほど濃密な空気を醸し出す音楽の密度とヴァリエーションは、とても3人で演奏しているとは思えないほど。若きヴァーチュオーゾたちが奏でる大都会のタンゴが、聴く者を妖しくも美しい世界に誘うこと、まちがいなし。
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