eぶらあぼ 2015.2月号
161/205
168CDSACDCDDVDソヌ・イェゴン 第5回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門優勝イタリア・オペラ管弦楽・合唱名曲集/バッティストーニ&カルロ・フェリーチェ歌劇場涙のバガテル~天使のピアノ~シルヴェストロフ:ピアノ作品集/塚谷水無子モーツァルト:レクイエム~ワルシャワ聖十字架教会ショパン追悼ミサ/ヘレヴェッヘラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番/リスト:シューベルトの歌曲によるトランスクリプション~連祷、糸を紡ぐグレートヒェン、水によせて歌う、セレナーデ、魔王/シューベルト:さすらい人幻想曲/ラヴェル:ラ・ヴァルスソヌ・イェゴン(ピアノ)ヴェルディ:《運命の力》序曲、《ナブッコ》より「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」、《アイーダ》より凱旋の合唱、凱旋行進曲とバレエ音楽/ロッシーニ: 《ウィリアム・テル》序曲、《セビリャの理髪師》序曲 他アンドレア・バッティストーニ(指揮)カルロ・フェリーチェ歌劇場管弦楽団&合唱団ヴァレンティン・シルヴェストロフ:天使(メッセンジャー)、3つの小品、追伸のついた2つのディアローグより「ウェディング・ワルツ」、3つのバガテルop.1・op.4、4つの小品op.2、後奏曲塚谷水無子(ピアノ)モーツァルト:レクイエムフィリップ・ヘレヴェッヘ(指揮)シャンゼリゼ管弦楽団コレギウム・ヴォカーレ・ヘントアカデミア・キジアーナ・シエナ他フォンテックFOCD-9654 ¥2400+税日本コロムビアCOGQ-72 ¥2800+税Pooh’s HoopPCD-1409 ¥オープン収録:2010年10月、ワルシャワ(ライヴ)東京エムプラスNIFCDVD-001J ¥オープンディスクをプレイヤーにセットするや否や飛び出してくる下降パッセージの熱気に、いきなり集中力が喚起される。2013年第5回仙台国際音楽コンクールの覇者、韓国出身のソヌ・イェゴンによる優勝記念アルバムだ。冒頭のラフマニノフのソナタ第2番は、強音弱音それぞれに多様な音色を聴かせ、複雑な声部を鮮やかに際立たせる。シューベルトの歌曲のリストによるトランスクリプションでは、歌い手の息づかいが届くようだ。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」でいよいよ低音コントロールの妙技が冴え、感性と理性が共演する。今後のイェゴンの活躍を予感させる一枚だ。(飯田有抄)東京二期会《ナブッコ》および東京フィルへの登壇でその天才ぶりが瞬く間に知れ渡ったバッティストーニの新譜は、カルロ・フェリーチェ歌劇場とのイタリア名曲集。《運命の力》序曲を聴いてすぐ分るのは自然な抑揚に満ちた、しなやかな音楽の躍動ぶりである。この曲に限らず鬼面人を驚かせるようなアクの強さで聴かせる訳ではないけれど、それぞれの楽曲に備わっている美質を「何も足さず何も引かず」に表出させられる才能は実に只者ではない。《マノン・レスコー》での高貴な激情、《カヴァレリア・ルスティカーナ》での宗教的とも言いうる内面的な演奏など、聴き所は尽きない。(藤原 聡)知られざるウクライナの作曲家シルヴェストロフ(1937〜)のピアノソロを集めたアルバム。どちらかといえば前衛的だった彼の作風は、妻の死を境にシンプルで美しいものへと変化する。愛妻の死は作曲家にとっておそらく想像を絶する辛さだったのだろう。その悲しみを乗り越えるために、そして妻との思い出や天上の彼女へのメッセージを綴るために、彼は美しい旋律を作っていった。このアルバムは「彼の人生を追体験する試み」と塚谷はライナーノーツに記している。その言葉通り、塚谷が優しく奏でる一音一音が、シルヴェストロフの達したピュアな安らぎの境地へと誘ってくれる。(大塚正昭)2010年10月、ショパンの命日に催された追悼ミサ。典礼にのっとった司祭による祈祷、グレゴリオ聖歌の朗唱なども収録され、厳粛な雰囲気の中で演奏されたレクイエムの貴重な映像だ。ショパン・コンクール会期中だったこともあり、参列者には審査員の小山実稚恵やネルソン・フレイレらの姿も見える。シャンゼリゼ管を指揮するヘレヴェッへはここで、エッジの効いた棒さばきを披露、ひきしまった早めのテンポをとり精緻かつ緊張感みなぎる表現─とりわけ「入祭文」と「続唱」─を実現させ、この作品の内奧に迫っている。ジュスマイヤー版を使用しての演奏。(城間 勉)
元のページ