eぶらあぼ 2015.2月号
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164CDSACDCDCD運命&未完成/佐渡裕&ベルリン・ドイツ響すべての道はバッハに通ず~チェンバロ音楽の150年/副嶋恭子菊~イタリア弦楽四重奏作品集/エルデーディ弦楽四重奏団へびとりのうた~木下牧子歌曲集/三原剛ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」シューベルト:交響曲第7番「未完成」佐渡裕(指揮)ベルリン・ドイツ交響楽団フレスコバルディ:ラ・ソル・ファ・ミ・レ・ウトによるカプリッチョ/フローベルガー:組曲第20番/クープラン:田園詩/J.S.バッハ:フランス組曲第2番、幻想曲とフーガBWV904、イタリア協奏曲 他副嶋恭子(チェンバロ)プッチーニ:菊ピツェッティ:弦楽四重奏曲第2番ロータ:弦楽四重奏曲エルデーディ弦楽四重奏団木下牧子:歌曲集「秋の瞳」より、へびとりのうた、抒情小曲集より、三好達治の詩による二つの歌、歌曲集「愛する歌」より、黒田三郎の詩による三つの歌三原剛(バリトン)木下牧子(ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25862 ¥3000+税コジマ録音ALCD-1144 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-3039 ¥2816+税収録:1999年10月、京都(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7775 ¥2200+税CDに代わって激減したLP時代の黄金カップリングである「運命&未完成」が蘇える! 中でも一世を風靡した1960年代のカラヤン&ベルリン・フィルの録音への意識もあるのだろう、当時と同じイエス・キリスト教会で録音されている。演奏自体も、まさにそのイメージ通りの音楽。無駄のない響きで颯爽と運ばれる「運命」に、ほどよく重厚で充分に美しい「未完成」…。こうしたカラヤン的な表現を、よりモダンかつ柔らかくして、当時にはない録音の鮮かさを加えた1枚ともいえるだろう。このストレートで衒いのない演奏は、両曲を初めて聴く人にも最適だ。(柴田克彦)大バッハが憧れ、学んだ先進地イタリアやフランスの音楽。バロック最大の巨匠がどう咀嚼し、自己の音楽へと昇華させたのか、その源流へと遡り、実際の音で体感できるアルバム。副島はフレスコバルディとフローベルガーでイタリアン、ダングルベールとクープランではフレンチと、2種のチェンバロを使用。前者での金属的で直線的な、そして、後者での豊潤で丸みを帯びた響きの違いを巧みに利用し、折り目正しく弾き分ける。さらに、それぞれの流儀を踏まえた大バッハの作品では、様式の違いに楽器の特性を共鳴させつつ、巨匠の比類なき多面性と作曲技法を浮き彫りにする。(寺西 肇)昨年、結成25周年を迎えた“老舗”の彼らが挑んだのは、20世紀のイタリアで生まれた3つの佳曲。いずれもこの国の作品ならではの雄弁な歌心に溢れているため、作品の随所に抒情的に膨らます余地がある。だが、エルデーディの解釈はある意味心憎いほど冷静であり、作品のロマンや悲劇性をあくまで自然な流れの中に描き出している。プッチーニの深い悲しみ、ピツェッティの緻密で重層的な伽藍、そしてロータの温かい憧憬。これらの多様な世界を、美しくアプローチしやすい音楽として磨き上げていることに感服した。作品に秘められた真実の美を改めて教えてくれるアルバムだ。(渡辺謙太郎)木下牧子の独唱曲は、多くの歌手たちによって好んで歌われている、現代の日本歌曲の欠かせないレパートリー。このジャンルで楽譜が続々と出版されているのは、快挙としか言いようがない。このCDは2000年にリリースされていた盤の、レーベルを移っての復刻。三原剛のノーブルなバリトンが美しい! 懐の深い自在な歌い口、ジェントルな二枚目の声、日本語の明瞭なディクション。なんともほれぼれするばかり。木下歌曲の、繊細な息づかい、色彩豊かな和声のうつろい、ピークへ向かうドラマティックな表現といった魅力を理想的に味わうことができる幸せな一枚。(宮本 明)
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