eぶらあぼ 2015.1月号
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56ミューズたちの魅力あふれるステージ文:笹田和人第8回 トッパン チャリティーコンサート小菅優(ピアノ) 2015.3/12(木)19:00林美智子(メゾソプラノ) 2015.3/13(金)19:00トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com 明治33年の創業以来、印刷を通じて情報や文化の普及・発展に力を注いできた凸版印刷。2008年からは途上国での識字能力向上を支援するチャリティーコンサートを開催、収益をユネスコ・アジア文化センターに寄付し、カンボジアでの識字能力向上のための教育支援を成功に導くなど、成果を挙げている。8回目となる今回は、ピアノの小菅優とメゾソプラノの林美智子、国際的な活動を展開する2人のミューズの魅力あふれるステージが開かれる。 小菅は2005年にニューヨーク、翌年にザルツブルクでリサイタル・デビューを果たし、欧州を中心に第一線をひた走ってきた。高度な技巧と美音のみならず、スコアの裏の裏まで読み取った、深い洞察に満ちた演奏で聴衆を魅了。進行中のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音およびリサイタルも素晴らしい出来栄え。「今、一番聴きたいピアニストの1人」と言っても良かろう。今回のステージでは、そのベートーヴェンのソナタから、後期の三大作(第30~32番)を披露する。 そして、深みある歌声ときめ細かな表現力で、日本を代表するメゾソプラノとして活躍する林。新国立劇場をはじめとするオペラの檜舞台への出演を重ねる一方、パーヴォ・ヤルヴィら名匠からの信頼も厚い。ピアノの名手・河原忠之の共演を得ての今回のステージ。ビゼー《カルメン》より〈ハバネラ〉などオペラの名アリアから、プーランクやサティの歌曲、さらに日本語詞が心に沁みる武満徹による名旋律まで、彼女の多層的な魅力が凝縮されたプログラムとなっている。林 美智子 ©Toru Hiraiwa小菅 優 ©Marco Borggreve聴く者の内面を揺さぶる気品あるリリシズム文:飯田有抄アレクサンダー・ロマノフスキー(ピアノ) 2015.1/23(金)19:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 2015.1/17(土) 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール(0570-064-939) アレクサンダー・ロマノフスキーの奏でるピアノは、気品あるリリシズムに満ち、そのシリアスな音色は聴く者の内面に揺さぶりを掛ける。30歳にして風格を漂わせる彼の持ち味を、たっぷり堪能できそうなリサイタルが開かれる。ベートーヴェンとショパンという、ピアノ音楽史にとてつもなく大きな功績を残した二人の作曲家のプログラムだ。 前半のベートーヴェンは、「月光」の愛称で親しまれるピアノ・ソナタ第14番、そして晩年のロマン的なソナタ第30番の2曲。深刻な色合いの「月光」と、柔和なホ長調が美しい30番。ロマノフスキーの深みあるタッチが鮮やかなコントラストを聴かせてくれるだろう。30番の終楽章は変奏曲形式である。ロマノフスキーはベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲」の録音をリリースしているだけに、この大作曲家の変奏曲に対する彼なりのアイディアを存分に表現してくれることだろう。 後半のショパンでは、まずバラードの2番と4番を披露する。どちらも美しい光がさすように開始するが、その後激しく展開するドラマをロマノフスキーがどう描き出すのか楽しみだ。そして今回のメイン曲として彼が掲げるピアノ・ソナタ第2番「葬送」。有名な「葬送行進曲」である第3楽章を含め、まったくキャラクターの異なる4つの楽章が展開し、不可解にも取れる形で終曲を迎える作品だ。この曲を通じて彼が今何を感じ、どんな想いを聴衆に届けたいのか、しっかりと受け取りたい。

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