eぶらあぼ 2015.1月号
55/209
52小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団日本フィル“伝統の”シベリウス・サウンドを聴こう文:山崎浩太郎ドミトリー・シトコヴェツキー(指揮・ヴァイオリン) 紀尾井シンフォニエッタ東京弦楽の艶と綾に酔いしれる幸福文:柴田克彦第667回 東京定期演奏会2015.1/30(金)19:00、1/31(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp第98回 定期演奏会2015.2/13(金)19:00、2015.2/14(土)14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp 「コバケン」の愛称で知られ、演奏会のたびに多くの熱心なファンが客席につめかける指揮者、小林研一郎。かつて音楽監督を、現在は桂冠名誉指揮者を務める日本フィルとはまさに肝胆相照らした、深い信頼関係で結ばれている。その小林が、生誕150年のフィンランドの作曲家シベリウスの代表作をメインとする定期演奏会を指揮する。 まずグリーグのホルベルク組曲は、ノルウェー語の原題にしたがって「ホルベアの時代から」という日本語題でも知られる作品。ノルウェー生まれでデンマークに活躍した18世紀の作家ルズヴィ・ホルベアを讃えて、ホルベアと同時代のバロック音楽のスタイルを意識した、軽快な弦楽合奏曲だ。 モーツァルトのオーボエ協奏曲は21歳の若き天才によるもので、この楽器のために書かれた協奏曲のなかでも最も有名な傑作。日本フィルの誇る若き首席奏者、杉原由希子が小林のもと これほど弦楽合奏にどっぷり浸れるコンサートは滅多にない。2月の紀尾でどのような演奏を披露するか、ききものである。 そしてメインのシベリウスの交響曲第2番は、この作曲家の名を世界に知らしめるきっかけとなった名作。チャイコフスキーなどロシア音楽の影響をたくみにとりいれつつ、美しい旋律と井シンフォニエッタ東京の定期演奏会の演目は、J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」(ドミトリー・シトコヴェツキー編弦楽合奏版)とチャイコフスキーの弦楽セレナード。小品や協奏曲は入れずに長い弦楽合奏曲2曲のみという、ソリストや在京オーケストラのトップ級を揃えた同楽団の面目躍如たるプログラムだ。 指揮は、シトコヴェツキー本人。旧ソ連出身の彼は、ベルリン・フィルやシカゴ響などの著名オケとの共演、室内楽、録音等々、第一線で活躍するヴァイオリンの名ソリスト。指揮者としても長く活動し、2003年からグリーンズボロ響の音楽監督を務めるほか、ロンドン・フィル、サンフランシスコ響など多数の楽団に客演している。 グールドが弾く「ゴルトベルク変奏曲」に心酔する彼は、同曲を自身の楽器で演奏すべく弦楽三重奏用に編曲(この版は既に定番)、次いで弦楽合奏用に編曲し、自ら指揮して録音も行った。これは、バッハの多彩な変容に、弦楽器の美しく豊かな響きと躍動感を加えた清新なアレンジ。原曲と新曲の妙味を同時に味わえる魅力作であり、原曲のファンも未知の方も快適かつ深く堪能できること請け合いだ。またチャイコフスキーの弦楽セレナードは、むろん同ジャンルの最高傑作だが、同楽団の定期には16年ぶりの登場。今回は、CMなどでもおなじみの名旋律を、名匠の指揮と名手揃う弦楽器群の豊麗なサウンドで耳にする貴重な機会となる。 ここはひとつ、弦楽合奏の芳醇な醍醐味を存分に満喫しよう。澄んだ響き、そしてドラマティックに盛りあがる構成で、フィンランド音楽の誇りと高らかな自立心を力強く感じさせる人気作品。創立以来、この作曲家を得意とする伝統をもつ日本フィルを、小林の熱いタクトがどのようにドライヴするか、期待の演奏会だ。杉原由希子小林研一郎 ©山口 敦ドミトリー・シトコヴェツキー
元のページ