eぶらあぼ 2015.1月号
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50CD『R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」』ソニー・ミュージックレーベルズSICC-1771 ¥2800+税絶好のタイミングでレコーディングすることができました取材・文:東端哲也Interview大谷康子(ヴァイオリン) 2015年にデビュー40周年を迎える、名実ともに日本を代表するヴァイオリニストのひとりである大谷康子。最新録音では若きR.シュトラウスの才気ほとばしるソナタとベートーヴェン“スプリング・ソナタ”のカップリングに挑んだ。 「どちらの作品もこれまで積み重ねてきたことがやっと熟して、今なら他の誰でもない自分の演奏ができると確信できた絶好のタイミングでレコーディングが実現したことが何より嬉しい。20代のR.シュトラウスが書いたソナタは近年特に人気が高まっていますが、単に美しいだけでなく、とても豊潤な作品だと思うんです。『ドン・ファン』や後の『英雄の生涯』といった傑作に繋がる要素がいろんなところに感じられるのが魅力ですね。一方でベートーヴェンのソナタはまさに王道と呼ぶに相応しく、彼の全てがそこにある気がして安易に手を出せない怖さがあります。曲の構築はがっちりしていても、当時の人々が『春』と呼んだように、明るくうきうきした気持ちが自然と出せるようなアプローチを心掛けました」 共演ピアニストは、様々な分野の世界的ソリストたちからの信頼も厚い、イタマール・ゴラン。 「事前に東京でお会いして、初めて一緒に演奏した時、すぐにお互いの音楽に対する考え方が同じだとわかって、一瞬で心が通じ合った。本番でも彼は最高の共演者で、特にその妥協しない姿勢には感銘を受けました」 レコーディング場所は1960年代などにカラヤン&ベルリン・フィルの録音で数多の名盤を生んだあの聖地。 「思いがけなく録音チーム・サイドから、イエス・キリスト教会でやりませんか? という提案をいただいて夢のようでした。ベルリン郊外にある本当に普通の教会で、工事や飛行機の音、鳥のさえずりなども時折聞こえてくるような環境なのですが、まるで建物全体がひとつの楽器のように響いて、外と中の空気が自然に混じり合うようなあの独特の雰囲気はコンサートホールでは出せない味わい。私もナチュラルな気持ちで演奏することができました」 今年はシュトゥットガルト室内管弦楽団との日本ツアーも成功し、和楽器・歌舞伎とのコラボーレション作品「卑弥呼」にも出演するなど多彩な活躍ぶり。 「どの作品でも作曲家の意図する様式に適切な表現を追究しつつ、自分らしさを貫く演奏を目指したいですね。まだまだやりたいことがいっぱいあります。更なる飛躍の年となる2015年にご期待下さい!」2015.1/10(土)15:00 神奈川県民ホール(小) 問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.com菅原淳とパーカッション・ギャラリー一柳慧も参加! 打楽器の祭典文:寺西 肇菅原 淳 日本を代表する打楽器奏者であり、38年間にわたって在籍した読売日本交響楽団では主にティンパニ首席を務め、退団後も正確な打撃と豊穣な響きによって聴衆を魅了し続けている菅原淳。そんな彼の薫陶を受けた一線奏者が2006年、師と共に結成したアンサンブル「パーカッション・ギャラリー」は打楽器本来の特徴と響きを追求し、その可能性を切り拓いている。今回のステージには、菅原の盟友であり、日本作曲界の重鎮である一柳慧がプリペアド・ピアノで参加し、ジョン・ケージの「アモーレス」を演奏。菅原の編曲によるビゼー《カルメン》からの名旋律のほか、一柳の「風の軌跡」やヒダノ修一「ネクスト・ゲーム」、オーストリアの作曲家ヴォルフガング・ライフェニーダーによる「ボール・パーカッション」など彩り豊かなサウンドを聴かせる。会場となる神奈川県民ホールは、菅原が1978年3月に名匠セルジュ・チェリビダッケのタクトのもと、“伝説の名演”を繰り広げたゆかりの場。新たに築かれる伝説が、ホール40周年へ華を添える。

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