eぶらあぼ 2015.1月号
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46下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団マーラーとタケミツの深遠なる世界へ文:オヤマダアツシ第13回 読響メトロポリタン・シリーズ2015.1/23(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール第578回 サントリーホール名曲シリーズ2015.1/24(土)14:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp2015.3/21(土・祝)14:00/18:00 兵庫県立芸術文化センター(中)問 芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255 http://www.gcenter-hyogo.jp 首席客演指揮者というポストの効力を最大限に活用するがごとく、読売日本交響楽団の定期演奏会では、音楽シーンに新たな問題提起をするようなプログラムで客席を唸らせてくれる下野竜也。1月の『読響メトロポリタン・シリーズ』および『サントリーホール名曲シリーズ』では、マーラーの交響曲第5番と武満徹の作品を組み合わせたプログラムで両者の特徴を引き出す。 下野+読響のマーラーといえば、これまで第1番「巨人」や第2番「復活」などが取り上げられ、いずれも見事な棒さばきとスコアの細部にまで踏み込んだアプローチが耳に残った。全体としては華美にならず地味にならず、しっかりと地に根を張っているような音楽の中、作品をよく知る人でも「なるほど、ここはこんな音だったのか」と思うような新鮮さがある。第4楽章に有名な「アダージェット」を擁する交響曲第5番は、演奏される機会が多い曲だが、それだけに下野流の音楽作りがこの作品の新しい一面を見せてくれるだろう。日本オペラプロジェクト 2014 オペラ《藤戸》有吉佐和子の原作による歴史絵巻文:寺西 肇 かつて関西で盛んだった日本人作曲家によるオペラ上演を再び活性化してゆこうと、音楽評論家・日下部吉彦のプロデュースで2013年にスタートした「日本オペラプロジェクト」。その第3弾は、1988年の初演以来、国内外で90回近くの再演を重ねている尾上和彦作曲の佳品《藤戸》を取り上げる。 源平合戦の世、藤戸の浦(現・岡山県倉敷市)で、平家を相手に劇的な勝利を収めた源氏の武将・佐々木盛綱。「平家物語」には、この時、浅瀬の場所を盛綱に教えた浦に住む男が、口封じのために殺されたとある。これを基に、死んだ男の母親や亡霊を登場させ、戦乱の世での庶民の悲しみを浮き彫りにした能「藤戸」が生まれた。 そして、1969年に作家の有吉佐和子が日本舞踊家の吾妻徳穂のために浄瑠璃(義太夫節)として書いた「藤戸の浦」では、浦の男は子供へと設定を変えられ、より親子の情愛を際立たせ コンサートの前半には、マリンバを極めるべく多彩な作品を演奏している小森邦彦がソリストとして登場。武満のマリンバ協奏曲「ジティマルヤ」(歌の花束)を演奏する。武満らしいファンタジーが豊かに鳴り響くこの作ている。これに感銘を受けた尾上が有吉の承諾を得て、オペラへと仕立てたのが《藤戸》。能とギリシャ悲劇の上演法を巧みに融合し、海外でも高い評価を受けてきた、 今回は、井上美和と小濱妙美(女)、迎肇聡と晴雅彦(盛綱)のダブルキャストに、古瀬まきを(子供)、松原友(千品は、聴き手のマリンバに対する印象を大きく変えるだろう。ヴァイオリン・セクションを全て欠いたオーケストラの音色も聴きものであり、「武満=静、マーラー=動」という対比も楽しめるはずだ。鳥)という日本が誇る実力派の布陣で臨む。これを奥村哲也指揮の器楽アンサンブルがバックアップ、鮮烈な舞台作りで聴衆を驚かせてきた気鋭の岩田達宗が演出。作曲家の意図を受けて、再演ごとに改訂が加えられ、“進化”を遂げてきた作品だけに、また新鮮な感動が味わえることだろう。小森邦彦下野竜也 ©読売日本交響楽団晴 雅彦迎 肇聡小濱妙美井上美和
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