eぶらあぼ 2015.1月号
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工夫が凝らされたパッケージと、バングラデシュ出身の画家カジ・ギャスディン氏による創意に溢れた装画に感心する田辺氏36MozartLegendaryRecordings『モーツァルト・伝説の録音』をめぐってモーツァルト演奏の“レジェンド”を集大成大原「まず、今回の企画ができた経緯ですが、25年ほど前にモーツァルト没後200年記念の『モーツァルト全集』(全16巻・小学館刊)を編集したときに、当時のフィリップスにいらした新忠篤(あたらし・ただあつ)さんといっしょに仕事をしました。私のほうは、その後『バッハ全集』『武満徹全集』『林光の音楽』(以上、小学館刊)を作ってきましたが、新さんとのお付き合いはその間もずっと続いていたんですね。新さんはSPSP時代のモーツァルトの名録音を復刻したCD36枚と書籍3巻からなる『モーツァルト・伝説の録音』の第1巻「名ヴァイオリニストと弦楽四重奏団」が2014年11月26日に飛鳥新社より発刊となった。このモーツァルト・ファン垂涎の企画について、本全集の編者とモーツァルト研究でも知られるドイツ文学者が語り合う。レコードのコレクターでもあり、今回また、新さんと共同で仕事をすることになったのです。SP時代のモーツァルトの名録音を総ざらいして、今までとは別次元の、録音時の空気感まで再現した素晴らしい音で復刻して、パッケージに閉じ込めようと。世界でも初めての試みだと思います。タイトルは、モーツァルトのレジェンド、つまり『モーツァルト・伝説の録音』。今は音楽もネット配信で簡単に拾えてしまいますが、この全集では書籍を充実させ、名録音のバックグランドを探り、歴史的文脈の中に置くことで、かつての名演奏、名録音がさらに意味を持ってくると思ったのですね」田辺「今回のSP録音の復刻CDの企画では、無理にSPの針音を取らず、ノイズとサウンドが混じり合う形で再現していて、全面的に賛成です。私は音楽を聴き始めたのが1960年代半ばのLP時代で、SP時代は直接的には知りませんが、それでもかつてはスクラッチノイズの中から音楽を掬い取るように“傾聴する”からこそ真剣に聴けたし、かけがえのない時間になっていました。演奏自体も、当時は編集ができなかったため1回の録音にかける覚悟がすさまじく、それが録音からしっかり伝わってくる。サンプルをいくつか聴大原哲夫Tetsuo O'hara エディター対談

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