eぶらあぼ 2015.1月号
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174CDCDCDCD田中範康作品集Ⅱ[音の情景]シルヴィーの歌/シルヴィー・ユーサン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、動物の謝肉祭/オーマンディ&フィラデルフィア管山崎伸子チェロ・リサイタルVol.7 with ヴィレム・ブロンズ田中範康:音の情景Ⅰ~Ⅲ、Sparkling in The Space Ⅰ「残照の時」、ピアノソロのためのモノローグ曲集より第1番、変容の時、相克の時 ニコラス・ケッケルト(ヴァイオリン)ボリス・アンドリアノフ(チェロ)松山元(ピアノ) 他プーランク:クラリネットとピアノのためのソナタ/サン=サーンス:クラリネット・ソナタ/ドビュッシー:クラリネットとピアノのための第1狂詩曲/ブトリ:飛鳥~クラリネットとピアノのための狂詩曲/フランセ:主題と変奏シルヴィー・ユー(クラリネット)フレデリーク・ラガルド(ピアノ)サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」、歌劇《サムソンとデリラ》よりバッカナール、「アルジェリア組曲」よりフランス軍隊行進曲、交響詩「死の舞踏」、組曲「動物の謝肉祭」ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管弦楽団 他ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番/ブラームス:同第1番/フランク:ソナタ イ長調(ヴァイオリン・ソナタ)/シューベルト:音楽に寄せて山崎伸子(チェロ)ヴィレム・ブロンズ(ピアノ)コジマ録音ALCD-103 ¥2800+税PRO ARTE MUSICAEPAMP-1051 ¥2700+税ソニーミュージックSICC-1741 ¥1190+税収録:2013年11月、東京(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7773 ¥2700+税2008年までの創作を追った前作(作品集Ⅰ)以降に書かれた室内楽作品を集めた。田中の創作は紛れもない現代音楽なのだが、弦楽器の扱い(「音の情景Ⅰ〜Ⅲ」)やピアノの書法(モノローグ曲集)、クラリネットの歌謡性にみられるように、スタイルの基本には前作から一貫して音に対するクラシカルな感性があるように思う。本作ではさらに表現手段を広げてエレクトロニクス(残照の時)や雅楽(変容の時)、ヴィブラフォン(相克の時)なども取り入れているが、興味深いのはこれらの楽器がクラシカルな感性に穴を穿つようにしてイマジネーションを解き放ち、新たなパースペクティヴを与えている点だ。(江藤光紀)1848年に起源を遡る、世界的な名門「パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団」初の女性メンバーであり、首席を務めるクラリネットの名手。王道のフランス3作品に、現代のロジェ・ブトリ(1932〜)を加えた録音には、彼女の魅力が満載されている。例えば、プーランクの第2楽章、駆け上がるスケールの一音ごとの粒立ちの良さ。サン=サーンスの最終楽章での音色の多彩さ。さらに、柿本人麻呂に触発され、古今の日本を往き来するブトリ作品での空気感の捉え方たるや、ツアーや後進の指導で来日も多いユーならでは。ピアノのラガルドの、繊細なサポートぶりも絶妙。(寺西 肇)いわゆる「アメリカの音楽家」に対する偏見が根強かった日本では、生前の人気と評価は決して高かったと言い切れないが、近年はあらためてその華麗な響きと高い技術が再評価されつつある、オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団のコンビ。4回録音した十八番の中の十八番、「オルガン付き」を中心にサン=サーンスの作品ばかりを集めたこのアルバムを聴くと、名高い「フィラデルフィア・サウンド」が、20世紀のオーケストラ芸術の粋ともいうべき、ひとつの高峰であったことを実感できる。美しく磨きあげられ、パワーと絶対の自信に満ち溢れた、ゴージャスな音楽。(山崎浩太郎)どれほど美音で、技巧に優れても、心に響かない演奏がある。しかし、山崎のそれは全く違う。豊穣な音色の向こうに温かな人柄が、技巧の向こうには齢を重ねてなお弛まぬ研鑽が、確かに聴いて取れる。10年連続のリサイタルを毎回、ライヴ録音で切り取るアルバムの第7弾。今回は30年来の共演歴のある名匠ブロンズと、2大Bにヴァイオリン曲から編曲のフランク、3つの名ソナタを弾く。それは、もはや“合わせる”という域を遥かに超え、まるで魂の触れ合い。心を一にして、喜びを紡いでゆく。アンコールに添えられたシューベルト「音楽に寄せて」も、聴く者の琴線に触れる。(寺西 肇)

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