eぶらあぼ 2015.1月号
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172CDCDCDCDコレッリ:ソナタ作品5 Vol.2/エンリコ・オノフリMY SWEET HOMETOWN/八巻志帆ショパン:ポロネーズ/宮谷理香歌曲の旅~5人の邦人作曲家をたずねて/荻原美城コレッリ:ヴァイオリンと、ヴィオローネまたはチェンバロのためのソナタ 作品5より第12番「フォリア」・第6番・第8番・第4番・第2番・第11番エンリコ・オノフリ(バロック・ヴァイオリン)イマジナリウム・アンサンブル岡野貞一:ふるさと/フォーレ:シチリアーノ、夢のあとに/黒人霊歌:ディープ・リバー/ピアソラ:リベルタンゴ、オブリビオン/滝廉太郎:荒城の月/菅野よう子:花は咲く/レーガー:アルバムのページ 他八巻志帆(バス・クラリネット)藤井裕子(ピアノ)ショパン:ポロネーズ第1番~第7番「幻想」・第11番宮谷理香(ピアノ)山田耕筰:AIYANの歌/三善晃:抒情小曲集/林光:四つの夕暮の歌/鈴木輝昭:“青春詩篇”による7つの歌/寺嶋陸也:曝井(さらしい)、歌はどうして作る、二月の街、川、はる荻原美城(ソプラノ)寺嶋陸也(ピアノ)Anchor RecordsUZCL-1028 ¥2667+税コジマ録音ALCD-3106 ¥2800+税Imagine Best CollectionIMGN-1107 ¥3000日本アコースティックレコーズNARC-2110 ¥3000+税鬼才によるコレッリのソナタ集の第2弾。今回は冒頭に、特に有名な「フォリア」を置いたが、最初からインパクトは大。低いローマ・ピッチ(a=390Hz)の鮮烈さもさることながら、熱く鳴り渡るバロックギターの音色も耳を捉える。オノフリは1710年ロジェ版の楽譜に記された「コレッリ自身による」装飾を踏まえながらも、一度完全に咀嚼した上で自在に再構築。時に緩やかなヴィブラートを効果的に使いつつ、しなやかな快演を聴かせる。そこには「イタリア人奏者がコレッリを弾くこと」の確かなプライドも。名盤ひしめく作品5にあって、独創性と流麗さに存在意義が光る。(寺西 肇)前作『バスクラ・リサイタル』から5年あまり。バス・クラリネットのソロ楽器としての魅力と可能性、そして演奏者の充実した研鑽の跡を同時に味わえる1枚だ。この楽器特有の朴訥とした温かみとノスタルジーに合った作品が並ぶ中、中央に1曲だけ曲想の異なるピアソラ「リベルタンゴ」を配置。結果として、各曲の魅力が自然に際立つが、アルバムとしての一体感もより強まって聴こえてくるから面白い。「本来バスクラが担うべき理想的な分野への挑戦」というライナーの一節にしみじみ納得。名手・藤井裕子(ピアノ)の心地よいサポートも光る、至福の1時間だ。(渡辺謙太郎)1995年にショパン国際コンクールで5位入賞、ソロに室内楽にと国内外で精力的な活動を展開する宮谷。ショパン録音の第4弾では、ポロネーズのうち、作曲家の生前に出版された第1〜7番へ挑んだ。民俗音楽に根差す泥臭さと、ショパン特有の洗練性が表裏一体となった感覚も、余すことなく表現。そして、宮谷自身が入賞後の人生で、どれほど深くショパンの音楽を掘り下げて来たのか。その答えが、フォルティッシモにも透明度を保ち、ピアニッシモの弾き出しにも芯を失わぬ、音の処理ひとつにも色濃く反映されている。アンコールのように添えられた、若書きの第11番も心にさざ波を立てる。(笹田和人)荻原美城は魅せられてしまったのだ。遊女の倦怠の先に妖しい世界がひっそりと口を開けているのに(山田耕筰「AIYANの歌」)。ほほずきを噛む女の口元が、揺れる調性の合間からほのかなエロスを立ち上らせるのに(三善晃「抒情小曲集」)。少女のうちに憧れとともにきざしてくる青春の息吹に(鈴木輝昭「“青春詩編”による7つの歌」)。そうしたポエジーはヨーロッパ風のオペラティックな歌唱では捕えることができない。母音を美しく響かせながらできるだけシンプルに、気づかないくらいのわずかな紅をさして。その歌声は私たちの懐に入り込んで、意識の古層を揺さぶろうとする。(江藤光紀)

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