eぶらあぼ 2014.12月号
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73華麗なるオペラ・アリアの世界オペラの名曲で迎えるドラマティックな新春文:東端哲也一柳慧 オペラ《水炎伝説》時空を超えた“死と再生”の物語文:宮本 明2015.1/7(水)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp2015.1/17(土)、1/18(日) 各15:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ 0570-015-415 http://www.kanagawa-arts.or.jp ウィンナ・ワルツやオペレッタの名曲で彩られたきらびやかなニューイヤー・コンサートも素敵だが、オペラ・ファンなら情熱的なアリアや愛憎うずまく二重唱を聴きながら迎えるドラマティックな新春も悪くないはず。『華麗なるオペラ・アリアの世界』こそ、そんな方々にぴったりの公演だ。オペラに定評のある東京フィルを梅田俊明が指揮し、艶やかな人気プリマと男気あふれる美声を取り揃えた豪華歌手陣が用意されているのならばなおさらだ。 ヴェルディ《椿姫》の〈乾杯の歌〉で幕を開ける第1部のメインはビゼー《カルメン》のハイライト。2009年の佐渡裕プロデュース公演でも同役を演じ絶賛されたメゾソプラノ、林美智子がタイトルロール。力強い中声域と輝かしい高音を備えたヒロイックなテノール、水口聡と共にステージで官能と情熱のドラマを繰り広げてくれることは間違いない。第2部ではオペラの粋 神奈川県民ホール開館40周年記念作品として一柳慧のオペラ《水炎伝説》が上演される。2005年作曲の混声合唱とピアノのための同名作品(委嘱初演:東京混声合唱団)の改訂初演版だ。もともと舞台用に構想され、合唱だけでなく、独唱者や、ときに語り手も多用されるオペラ仕立てだった作品が、作曲者自身の管弦楽編曲により新たな装いをまとって生まれ変わる。 大岡信によるテキストは、古代の菟原処女(うないおとめ)伝説を素材とした1989年の戯曲。美女アカトキを争う二人の男。彼らはそれぞれ昼と夜の世を集めた名場面の競演。ここでは日本人ソプラノの名花、森麻季がグノーやマイアベーアなどの作品からコロラトゥーラの難役を披露。林美智子とドリーブ《ラクメ》から〈花の二重唱〉をデュエットするのも聴き逃せない。そして日本を代表するバリトン、堀内康界の住人で、昼と夜が交替する暁の化身であるアカトキは一方に属することができない。二人は誤って彼女を弓で射殺してしまう。死後の世界の支配者はアカトキの姉トコヨ。美しいけれど生という限られた時間の中でしか存在できない妹と、永遠の命を与えられた、しかし闇の世界だけに生きる醜い姿の姉。“美と永遠”が、死と再生の主題の中で象徴的に浮き彫りにされてゆく。 出演は、アカトキに天羽明惠(ソプラノ)、二人の男に高橋淳(テノール)と松平敬(バリトン)。アカトキの母とトコヨの2役を加賀ひとみ(メゾソプラノ)雄がドニゼッティやロッシーニから愛のアリアを歌い上げ、水口聡とはヴェルディ《オテロ》の〈復讐の二重唱〉で盛り上げる。もちろんオペラ・ビギナーも大歓迎。歌劇を知り尽くした朝岡聡による巧みなナビゲートに導かれ、年の始めから夢の世界へ!が演じる。演出(美術・振付も担当)はこれがオペラ初演出の舞踊家・中村恩恵。3人のダンサーが出演するが、歌手陣の動きは、逆にかなり抑制されたものに限定されるとのこと。静と動という演出上の新たな対比が、物語自体を構成する複層の対照を、さらに多軸化する効果となるのだろう。上演時間40分ほどの短編オペラ。目と耳と脳を研ぎすませて臨め!堀内康雄 ©深谷義宣水口 聡林 美智子森 麻季 ©Yuji Hori松平 敬高橋 淳加賀ひとみ天羽明惠 ©Akira Muto一柳 慧 ©Koh Okabe

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