eぶらあぼ 2014.12月号
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66左:藤村俊介 右:安田謙一郎藤村俊介(チェロ)& 安田謙一郎(チェロ)師弟で紡ぐ絶妙のデュオ取材・文:渡辺謙太郎Interview 近年、2CELLOSの活躍などで注目を集めているチェロのデュオ。この編成のための作品は、ポップスやロックの編曲だけでなく、バロック時代や近現代にも名曲が多い。この度、マイスター・ミュージックから発表される『チェロ・デュオ』は、その歴史を凝縮した1枚だ。演奏はNHK交響楽団次席奏者の藤村俊介と、日本チェロ界の重鎮・安田謙一郎。2人は師弟関係にあることもあり、実に自然で息の合ったアンサンブルと、艶やかでエレガントな音色を聴かせてくれる。2人のデュオが実現した経緯を藤村に尋ねた。 「安田先生は僕が最も尊敬してやまないチェリスト。中学2年生で師事して以来、音楽に純粋に人生を捧げる生き方から大きな影響を受けました。今回の録音は共演者の人選を一任されたので、駄目元で先生にお願いしたら快諾いただいて。ひとつの対象に向かって2人でアプローチしていく中で、先生の柔軟性と懐の深さを間近で見られて勉強になりました。一生の思い出に残る録音です」 安田もそんな愛弟子を昔から高く評価していたという。 「若い頃から熱心で、朝5時から学校に来て練習していた姿をよく覚えています。今回は彼の邪魔になったり、遅れをとったりしないように必死で頑張りました(笑)」 収録曲は、2つの18世紀作品(ボッケリーニ&クープラン)と3つの近現代作品(バルトーク、ポッパー、プロコフィエフ)を対置。パートはすべて藤村がファーストで、安田がセカンドに固定した形で演奏している。チェロ2挺のアンサンブルの醍醐味や難しさを、安田は次のように語る。 「チェロのデュオは対話から成っているケースが多いので、作れる音楽は限られているかもしれません。でも、藤村君は昔から音色や音形に対する想像力が豊かなので、その道を模索していく内に、対話を越えた立体的なイメージを共有できた気がします。とても面白かったですよ」  バルトークの二重奏曲集は、ヴァイオリン2挺のために書かれた作品をW.クルツがチェロ用に編曲•編集したもの。藤村は、「原曲のヴァイオリンの魅力を損なわずに演奏するのが大変でした」と振り返り、「ハンガリーのジプシーの音楽をチェロで再現するのは不可能に近い。どうしても椅子に座った改まった姿勢になってしまうんです。でも、バルトークはそれを他の楽器でも育むことができるように、“空気”というか、“隙間”も残してくれた」 次回作ではヘンデルのソナタに挑戦したいと語る2人。こちらにも期待が募る。2015.2/27(金)19:00 東京文化会館(小)仲道郁代ワークショップ『実験&実演でわかる! ピアノのしくみ、ホールの秘密』2015.2/21(土)15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jpMusic Weeks in TOKYO 2014 プラチナ・シリーズ 第4回仲道郁代(ピアノ)& 川久保賜紀(ヴァイオリン)ミューズの共演が実現文:笹田和人川久保賜紀 ©Yuji Hori仲道郁代 ©Kiyotaka Saito 1987年のデビュー以来、第一線で活躍し、特にベートーヴェンの演奏で定評あるピアノの仲道郁代。そして、2002年にチャイコフスキー国際コンクールで最高位に入賞し、世界の檜舞台での経験を重ねるヴァイオリンの川久保賜紀。2人のミューズの顔合わせが、東京文化会館のプラチナ・シリーズで実現する。 今回取り上げるのは、共にウィーンを拠点とした、2人の大作曲家の佳品。まずはヴァイオリン・ソナタ第5番「春」にピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」と、ベートーヴェンを。そして、ピアノのための「3つの間奏曲op.117」などに、ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」と、ブラームスを披露する。 また、このステージに先立ち、関連プログラムとして、仲道によるワークショップ『実験&実演でわかる! ピアノのしくみ、ホールの秘密』も開催。実際の演奏を交えながら、ピアニストがどう楽器を、そしてホールを“鳴らす”工夫をしているのか、分かり易く解き明かしてゆく。CD『チェロ・デュオ』マイスター・ミュージックMM-3034 ¥2816+税11/25(火)発売

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