eぶらあぼ 2014.12月号
67/221
64ダン・エッティンガー(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団 「第九」ゴジラ(!?)と共に記念イヤーを祝う文:柴田克彦第12回 ヘンデル・フェスティバル・ジャパン 《アレグザンダーの饗宴》ヘンデルのユニークな“音楽賛歌”文:寺西 肇12/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール12/21(日)19:00 サントリーホール12/23(火・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp2015.2/13(金)18:30 浜離宮朝日ホール 問 アレグロミュージック03-5216-7131講演会 《アレグザンダーの饗宴》の魅力 2015.1/12(月・祝)14:00 池上ルーテル教会 http://handel-f-j.org 今年の東京フィルの「第九」は、ひと味違う。なんと組み合わせが、あのゴジラの音楽を含む伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番より」。これは、ゴジラ誕生60年、伊福部生誕100年に、ハリウッド映画『GODZILLA』のヒットを絡めた2014年ならではの選曲だが、「第九」公演でのカップリングとしては前代未聞だ。しかも指揮がダン・エッティンガーだから、いやがおうにも興 多様なヘンデルの作品を紹介することを目的に、2003年にスタートしたヘンデル・フェスティバル・ジャパン(HFJ)。12回目となる今回は「ヘンデルの英語の劇場音楽の多様性」をテーマに、数ある劇場作品の中でも特にユニークな存在であるオード《アレグザンダーの饗宴》全2部を全曲上演する。 ロンドンでのイタリア語によるオペラ活動に限界を感じたヘンデルは、英語によるオラトリオに活路を見出す。しかし、そこに至る過程では、様々な形態の作品が生み出された。そのひとつが「頌歌」ことオード。1736年に初演された《アレグザンダーの饗宴》は音楽の守護聖人である聖セシリアを称える、登場人物の対話を交えない“音楽賛歌”である。音楽を使って自在に人を操る吟遊詩人ティモテウスと、音楽を神聖なものとして扱う聖セシリアを対置。多彩な楽器用法による場面描写味をそそられる。彼はこの曲を一体どう振るのだろうか? その場面を見るだけでも行く価値がありそうだ。 「第九」もむろん楽しみ。2010年から東京フィルの常任指揮者を務めるエッティンガーは、これまで同楽団からドイツ風の分厚い響きを引き出し、重層的かつ引き締まった演奏を聴かせてきた。それに彼は、バレンボイムの薫陶を受け、現在マンハイム国民劇場の音楽総監督を務めるほと、荘重な曲調が聴きどころだ。 今回も、HFJ実行委員長でヘンデル研究の第一人者の三澤寿喜が指揮。古楽器集団キャノンズ・コンサート室内管弦楽団は、コンサートマスターに川久保洋子、首席チェロ奏者にも懸田貴嗣と、ヨーロッパの主要アンサンブルでも活躍中の名手を迎える。もちろん、か、ウィーン国立歌劇場はじめ各地の一流歌劇場に客演してしている。すなわち、ドラマティックなドイツ音楽の極致たる「第九」は、本領が最も発揮される演目といえる。同楽団との「第九」は、白熱の名演が大反響を呼んだ(ライヴCDもリリース)2010年以来4年ぶり。今回も一線級のソリスト揃いだし、同曲で重要な合唱を日本随一の東京オペラシンガーズが受け持つのも心強い。そして当コンビが今年8月の『フェスタサマーミューザ』で聴かせた、まさしく重層的でドラマティックなマーラーの交響曲第5番からも、前回を上回る巨匠的熱演への期待が膨らむ。 「第九」もまた初演190年という記念(?)の年。日独の記念すべき音楽で、歓喜のクリスマス&年末を迎えよう。ソプラノの広瀬奈緒ら声楽陣にも実力派が集結し、キャノンズ・コンサート室内合唱団もバックアップ。ステージでは初演時と同様、有名なハープ協奏曲やオルガン協奏曲も併演し、その興奮の再現を目指す。また、ステージに先立つ1月には、三澤が同曲の魅力を語る講演会もある。ダン・エッティンガー左から:三澤寿喜/広瀬奈緒 Photo:Kohei Take/辻裕久 Photo:Kanako Shiraisi(東陽写場)/牧野正人
元のページ