eぶらあぼ 2014.12月号
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55大野和士 ©武藤 章第666回 東京定期演奏会12/5(金)19:00、12/6(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp大野和士(指揮) 東京都交響楽団クラシック&モダンの隠れ名曲2本立て文:江藤光紀外山雄三(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団巨匠の自作自演とバッハを巡る名曲文:飯尾洋一第780回定期演奏会Aシリーズ12/8(月)19:00 東京文化会館第781回定期演奏会Bシリーズ12/9(火)19:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727http://www.tmso.or.jp 来春から大野和士が東京に拠点を移す。欧米トップランクの歌劇場やオーケストラで経験と実績を積んだ大野の新ポストは、都響の音楽監督。ファンではなくても期待が膨らむ。 12月の定期は彼らの今後を占う大事な前哨戦となろう。クラシック・モダンの隠れ名曲2本立てという選曲も大野らしい。まずはバルトーク。彼らは数年前にもダイナミックな「管弦楽のための協奏曲」を聴かせてくれたが、「弦チェレ」もそれと並ぶバルトークの代表作。不安定な旋律が無限に絡まりあって始まり、民族的な躍動感と怜悧な思考が結びつきながら、熱狂的なクライマックスに至る。 後半はフランツ・シュミットの交響曲第4番。シェーンベルクやストラヴィンスキーらの新音楽が台頭するさなかにあって、シュミットは後期ロマン派を受け継ぐ調性音楽を書き続けた。彼の最後の交響曲は、そうした西洋音楽の 12月の日本フィル東京定期で指揮台に立つのは日本の音楽界の重鎮、外山雄三。東京定期は17年ぶりの登場となる。『音楽の父 J.S.バッハを巡って』の副題を掲げ、自作とベートーヴェン、バッハの編曲作品からなる興味深いプログラムが組まれた。 自作自演となるのは、日本フィルゆかりの作品でもある交響詩「まつら」。1982年の日本フィル九州ツアーの際に、唐津市の人々を中心とする募金によって委嘱されたという、地元市民の要望から生まれた交響詩である。当地に伝わる古謡を素材として、精彩に富んだ管弦楽曲が生み出された。 小山実稚恵を独奏に迎えるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」も大きな聴きものとなる。常に期待を裏切らない日本屈指の名手と大ベテランとの共演となれば、風格の漂うベートーヴェンを期待したいもの。 オーケストラ向けの華麗な編曲が施終わりを予見させるまがまがしさに満ちている。霧の中に響きわたるトランペット独奏に始まり、冬の日の曇天のようにどんよりと果てしなくさすらい続ける。時折日の光が差し込む他は、どこにも辿りつかないまま冒頭のトランペット主題によって閉じられる。 実はこの2曲は1933年(シュミット)、36年(バルトーク)と、ヨーロッパに再び戦火の足音が迫りつつある時代に、オーストリア・ハンガリー文化圏の2人の作曲家によって書かれている。優れた芸術家はその鋭敏な嗅覚によって、時代の危機を作品に映し出す。戦慄と共に、私たちに深く問いかけてくる一夜になりそうだ。されたバッハの3曲も楽しみだ。ストコフスキー編曲の代表作ともいうべき「トッカータとフーガ」、カンタータ第208番よりアリア「羊は安らかに草を食み」。そしてもう一曲はレスピーギの編曲による「パッサカリアとフーガ」。この曲はストコフスキーによる編曲が知られているが、今回はレスピーギの編曲で演奏される。一段とゴージャスな装いをまとったバッハを堪能することができるだろう。色彩豊かで絢爛たるオーケストレーションがバッハに新たな生命を吹き込む。外山雄三 ©S.Yamamoto
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