eぶらあぼ 2014.12月号
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48©Sophie Pawlak共演:萩原麻未(ピアノ) 11/29(土)はつかいち文化ホールさくらぴあ、11/30(日)つくばノバホール12/3(水)あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール、12/5(金)紀尾井ホール、12/7(日)iichiko総合文化センター共演:横川晴児(クラリネット) 12/2(火)習志野文化ホール他公演 11/23(日・祝)藤野芸術の家、11/24(月・休)武蔵野市民文化会館、12/8(月)サルビアホール、12/9(火)王子ホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 http://www.tvu.co.jp/musicヴォーチェ弦楽四重奏団パリ発、気鋭の4人組のサウンドに酔う取材・文:秋島百合子Interview メンバーの全員がパリ国立高等音楽院の卒業生で結成されたヴォーチェ弦楽四重奏団が、今年で結成10周年を迎えた。2008年と10年の来日公演では卓越したハーモニーが大きく評価された彼らの3度目の来日公演が行われる。 ヴォーチェSQは2006年のジュネーヴ国際音楽コンクール最高位で入賞した後も、ボルドー、グラーツ、ロンドンなどで入賞や特別賞の受賞を果たしている。しかし今やコンクールでの快挙を連ねるまでもなく、フランス内外の音楽祭やコンサート会場で着々と地盤を固めている。公演回数は年間80回を下らないという。 先だってヴァイオリンのサラ・ダイヤンに話をきいた。 「2013/14シーズンにパリのシテ・デ・ラ・ムジクより推薦されてヨーロッパ・コンサート・ホール協会の“ライジング・スター”に選ばれたのは大変に名誉なことと思っています。アムステルダムのコンセルトヘボウ、ウィーンのコンツェルトハウスなど、欧州20ヵ所の主要ホールで演奏する機会を得ました。昨年9月には、若い音楽家の登竜門ともいえるベルリン・フィルハーモニーの室内楽ホールで、日本ツアーのプログラムにも含まれるシューベルトの『第15番』とフランクの『ピアノ五重奏曲』を演奏しました」 この演奏会は“アンサンブル能力、豊かな音色のパレット、フル・オーケストラが目の前で弾いているような錯覚すら覚え、木管楽器、金管楽器まで聴こえてくるようだ”と高い評価を得た。 今回の来日ツアーではモーツァルトの第19番「不協和音」と、ベートーヴェン2曲など多様なプログラムを組んだ。 「モーツァルトは我々にとってとても重要で、近々フルート四重奏曲を録音する予定があります。ヤナーチェク『内緒の手紙』は様々な楽器に違う役目を与えるので選びました。ベートーヴェンは、ここ数年何度も演奏している『ラズモフスキー第2番』も取り上げます。これはすでに録音も済んでいます」 そして独奏者を迎えての五重奏曲も用意されている。 「フランクとドヴォルザークの『ピアノ五重奏曲』は、萩原麻未さんと共演します。萩原さんとは5年前にジュネーヴで出会い、歌うような演奏に惹かれて意気投合したのです。初めて共演するドヴォルザークも楽しみです」 さらにブラームスのクラリネット五重奏曲では、パリ国立高等音楽院の先輩にあたる横川晴児と共演。こちらも聴きものだ。12/9(火)19:00 トッパンホール 問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp 全国公演の日程は左記ウェブサイトでご確認ください。ケマル・ゲキチ(ピアノ)本当に弾きたい作品だけを選んで文:高坂はる香 超絶技巧のピアニストとして人気を集め、50代を迎えた今も精力的な活動を続けるケマル・ゲキチ。今回、耳に新しい意欲的なプログラムでリサイタルを行う。 前半は、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」、「前奏曲、アリアと終曲」。晩年の境地を示すような内向的な音楽に、円熟期を迎えたゲキチが向き合う。そして一転、後半には20世紀に作曲されたエキゾチックな作品が並ぶ。まずは、セルビアのタイチェヴィチと、ゲキチの故郷クロアチアの作曲家パパンドプロの作品で、血に流れる感性を発揮する。続けて中南米の音楽から、ヒナステラ、アレン、レクオーナを取り上げる。ゲキチは30代の頃、渡米中にユーゴ紛争が勃発したことでやむをえず拠点をアメリカに移し、現在もフロリダの大学で教鞭を執る。現地で出会った南米の学生や音楽家の影響で、こうした作品のすばらしさに気づいたという。 今彼が本当に弾きたい作品だけを選んだことが伝わる。まるで半生の経験を投影するかのような、魅力あふれるプログラムだ。
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