eぶらあぼ 2014.12月号
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27212/6(土)~12/21(日) 静岡芸術劇場 問 SPACチケットセンター054-202‐3399 http://www.spac.or.jp小野寺修二©石川純小野寺修二 × SPAC『変身』静岡でしか観られない新作登場!文:乗越たかお文:石村紀子キエフ・バレエ『くるみ割り人形』&〈バレエ・リュスの祭典〉 暮れの風物詩となったキエフ・バレエの来日公演。今年はクリスマスシーズンならではの『くるみ割り人形』と、〈バレエ・リュスの祭典〉の2本立てとなっている。 旧ソ連3大バレエ団のひとつであるキエフ・バレエは、正統派ロシア・バレエを継承しているのが特徴。ダンサーは皆、手足が長く優美で、バレエダンサーとして完璧な資質と美しさ、高度なテクニックを備えている。主役からコール・ド・バレエ(群舞)まで音楽性の高い流麗な踊りで彩られる舞台は必見だ。 『くるみ割り人形』はクリスマス・イブの夜、少女クララが体験する夢いっぱいのファンタスティックな物語。見終わった後幸せな気持ちになれる作品なので、クリスマスのデートにいかがだろうか。お子様の初鑑賞作品として 朝起きたら虫になっていた、というあまりにも有名なフランツ・カフカの『変身』は、けっこう舞台化されている。ただ鍵になるのが主人公ザムザの見せ方だ。特殊メイクや虫の着ぐるみ着用などで登場したら、お笑いになってしまう。そこで演者は身体ひとつで、いかに観客の脳内に虫を現出させるかが腕の見せどころとなるわけだ。難しいが、だからこそ多くのアーティストが取り組んできたし、優れた作品も多い。 そこで小野寺修二である。 ときにテキストも使うが、マイムをも最適だ。 〈バレエ・リュスの祭典〉では『レ・シルフィード』と『シェヘラザード』の2演目を上演。どちらもミハイル・フォーキンが振付けたバレエ・リュスの代表作である。『レ・シルフィード』は、真っ白なロングチュチュをまとった空気の精と詩人が、月明かりの中で踊る筋書きのない踊りである。体重を感じさせない軽やかさで舞うシルフィードたちの姿は、この世のものと思えぬほど幻想的で、バレエの優雅さを存分に堪能させてくれる。 一方の『シェヘラザード』は、アラビアの後宮を舞台に繰り広げられる官能的な作品。王の留守中、愛妾ゾベイダをはじめ後宮の女たちが奴隷たちと秘め事にふけっているところに王が戻り、女と奴隷たちは殺され、ゾベイダも自害するという悲劇。愛欲、激情、哀惜など人間のもつさまざまな感情がこれでもか! と詰め込ベースにした独特の動きで、これまでにも数々の文学作品に挑んできた。しかも推理小説から長大なロシア文学作品まで。これだけ幅広い小説を作品化しているアーティストは、演劇でもダンスでもちょっと類を見ない。いや演劇とダンス両面の強さを活かせる小野寺でなければ不可能なことかもしれない。小野寺によってこの作品がどんな風に「変身」するのか、実に楽しみである。『くるみ割り人形』 12/20(土)15:00、12/23(火・祝)14:00 東京国際フォーラム ホールA、12/25(木)19:00 ルネこだいら〈バレエ・リュスの祭典〉『レ・シルフィード』『シェヘラザード』12/27(土)、12/28(日)各14:00 Bunkamuraオーチャードホール問 光藍社チケットセンター050-3776-6184 http://www.koransha.comまれた濃厚な作品である。ゾベイダを踊るのはダンサーとして円熟期を迎えているエレーナ・フィリピエワ。全身から薫りが立ち上るような妖艶さと、王に愛されてはいるものの、所詮は囚われの身である哀しさを兼ね備えた表現力は見事としか言いようがない。ゾベイダの相手となる“金の奴隷”を踊るのはウクライナ出身のイヴァン・プトロフ。英国ロイヤルバレエ時代に培った演技力と身体能力の高さで女性を魅了するエロティシズムを見せつけてくれることだろう。 20世紀初頭にヨーロッパに紹介され、旋風を巻き起こしたロシア・バレエ=バレエ・リュス。この代表作2演目を観れば、今なお色褪せない作品の魅力や芸術性の高さを実感できるはず。この機会を逃さないようにしたい。エレーナ・フィリピエワイヴァン・プトロフ

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