eぶらあぼ 2014.12月号
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271Aoyama Ballet Festival ̶ Last Show ̶青山劇場のフィナーレを飾るバレエ公演文:新藤弘子上野水香プロデュース・バレエ Jewels from MIZUKAマラーホフやボニーノがみせる魅惑の舞台文:新藤弘子 しなやかな脚線美と卓越したバレエ・テクニックでローラン・プティら世界的振付家たちを魅了し、現在は東京バレエ団のスターとして活躍する上野水香。神奈川出身の彼女が、初のプロデュース公演を神奈川県民ホールで行う。 上野の幅広い交流を物語る豪華な参加メンバーの中で、まず注目は、東京バレエ団のアーティスティック・アドバイザーも務めるウラジーミル・マラーホフ。十八番の『白鳥の湖』第2幕を吉岡美佳と踊るほか、シディ・ラルビ・シェルカウイ振付の『イカロス』を日本初披露する。1月にベルリンで初演し話題を呼んだソロ作品である。ルイジ・ボニーノは、プログラム中の4作を占めるプティ作品の2つに出演。『シャルロ』ではソロを、上野と組む『チーク・トゥ・チーク』では、おなじみの茶目っ気のある表情と軽快なステップをジャズの響きに乗せて、たっぷり見せてくれるはずだ。ダンサーとして最高に輝く時期を迎えた上野とボニーノ。プティのエスプリを受け継ぐ2人が生み出す、お洒落な大人の世界に期待がふくらむ。2015.1/29(木)、1/30(金)各18:30 青山劇場 問 こどもの城劇場事業本部03-3797-5678 http://www.aoyama.org11/29(土)15:00 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.com『イカロス』©瀬戸秀美『チーク・トゥ・チーク』©瀬戸秀美 バレエやミュージカルなど、華やかな公演の会場として多くの人に親しまれてきた青山劇場。バレエファンには、熊川哲也がゴールドメダルを受賞したローザンヌ国際バレエ・コンクールが開催された場所としても知られる。2012年に厚生労働省が閉館の方針を打ち出して以来、存続を望む声が広がっていたが、惜しくも2015年1月いっぱいで閉館することが決まった。その最終公演として、2000年まで開催されていた青山バレエフェスティバルが2夜限りの復活。ゆかりのあるダンサーたちが集結し、劇場のフィナーレに華を添える。 ベテランから若手まで、実力と個性を併せ持つダンサーたちが選んだプログラムは、古典も現代作品も、その人の極め付けと思えるものばかり。酒井はなはマルコ・ゲッケ振付『モペイ』を踊るほか、西島千博と組み西島振付の『シェヘラザード』を披露する。西田佑子と横関雄一郎は『ライモンダ』を、下村由理恵と佐々木大は『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥを踊る。キミホ・ハルバート、小㞍健太らが自らの振付作品を披露するほか、Noismで金森穣と共に充実した活躍を繰り広げる井関佐和子が、金森の最初の作品『Under the marron tree』を踊るのも、記念すべき公演にふさわしい。他にも、福岡雄大ら旬の男性ダンサーたちが踊る矢上恵子振付『組曲PQ』など、見どころは尽きない。『Under the marron tree』井関佐和子 © 瀬戸秀美 柄本弾、沖香菜子、松野乃知、木村和夫ら、東京バレエ団で活躍するダンサーたちも多数出演。『パリの炎』『ドン・キホーテ』などの有名パ・ド・ドゥが観られるのはもちろん、高岸直樹や元東京バレエ団の高橋竜太が新作振付を提供するなど、内容は多彩だ。まさに宝石箱のような公演を楽しみに待ちたい。
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