eぶらあぼ 2014.12月号
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172CDCDCDCD小さな羊飼い/池田昭子じゅういちもんめコンサート~三善晃:合唱曲選集/栗友会Récit(レシ)~ファゴットで「語る」近代音楽の精華/岡本正之玉たまゆら響*ぴあにッシモ/若林千春ブラームス,フォーレ,R.シュトラウス:子守歌/ベッリーニ:カスタ・ディーヴァ/マルティーニ:愛の喜び/ゴダール:ジョスランの子守歌/グリエール:コロラトゥーラ・コンチェルト/ドビュッシー:夢、亜麻色の髪の乙女、小さな羊飼い 他池田昭子(オーボエ、イングリッシュ・ホルン)石田三和子(ピアノ)三善晃:島根のわらべ歌、五つの唄、あなたにサタンがいるなんて、かなしみについて、生きる、交聲詩「海」、であい栗山文明(指揮)浅井道子、斎木ユリ、寺嶋陸也、須永真美(ピアノ)栗友会ギャロン:レシとアレグロ/ボザ:レシ、シシリエンヌとロンド,ノクターンと舞曲/デュティユー:サラバンドとコルテージュ/サン=サーンス:ファゴット・ソナタ/タンスマン:ソナチネ/リスト:悲しみのゴンドラ 他岡本正之(ファゴット)永原緑(ピアノ)若林千春:玉響…momentariness(14曲)、TEN-SEN-MEN Ⅰ、UTU…原響 Ⅲ、迦陵頻伽 Ⅰ若林千春(ピアノ)若林かをり(フルート)マイスター・ミュージックMM-3030 ¥2816+税収録:2014年5月、東京オペラシティコンサートホール(ライヴ)日本アコースティックレコーズNARC-2115 ¥2500+税コジマ録音ALCD-3105 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7770 ¥2500+税N響オーボエ奏者・池田昭子の2年ぶり6枚目のソロ・アルバム。全て編曲もので、子守歌と題した4曲をはじめ、夢想的な作品や優しい音楽が全体を貫いている。池田は、過剰に陥らないごく自然な歌い回しで、“凛とした慈愛”を感じさせる演奏を展開。中でも、「カスタ・ディーヴァ」の哀感には惚れ惚れさせられるし、グリエールの「コロラトゥーラ・コンチェルト」は新鮮で興味深く、イングリッシュ・ホルンを用いたブラームスとフォーレの「子守歌」で、N響でも人気が高い彼女ならではの妙演を耳にできるのも嬉しい。癒し効果も期待できそうな、愛すべき1枚。(柴田克彦)昨年10月に他界した三善晃の合唱曲から、指揮者・栗山文昭が初演した作品ばかりを選曲した演奏会の記録。始めと終わりに栗山の出身地・島根と関わり深い作品が置かれていることにも両者の強い同盟のようなものを感じる一枚だ。彼らの協働の歴史の初期に最も衝撃的だったのは「海」という名作が生まれたことだが、栗山はこの曲を何度も録音している。執念、だろう。試みに初演のライヴと当盤の演奏を比べると、10分半から12分と、1分半も遅くなっている。確かめようと聴き比べてみても全体的なテンポ構成はさほど変わらない。一音一音に深く刻まれた三善への愛ゆえか。(宮本 明)室内楽でも、“縁の下の力持ち”的な、どこか一歩引いたイメージを持たれがちなファゴット。だが実は、これほど饒舌な楽器だとは。都響の首席を務める一方、リサイタル活動などを通じて、ソロ楽器としてのファゴットの可能性を切り拓いてきた岡本。当盤ではフランスの近現代の佳品を中心に取り上げ、時に涼やかな透明感、時に豊穣な滋味を際立たせて、その多面的な魅力を掘り下げる。特に、ボザやサン=サーンスなど、ファゴット吹きにとっては、コンクールなどでお馴染みの作品にも、新鮮にアプローチ。「なぜ名曲か」という問いに、改めて答える秀演を聴かせている。(寺西 肇)若林千春は音という現象にポエジーを見出す作曲家だ。ピアノに潜む密やかな詩を聴き取ることが、タイトルの「ぴあにッシモ」に込められた意図ではないか。当盤所収の17曲の多くを占める「玉響(たまゆら)」シリーズは主にピアノ独奏の短章で、音の泡立ち、響きあいや美しく尾をたなびかせる音の軌跡を愛でつつ、俳諧のようにまとめてみせる。3曲はフルートとのデュオだが、こちらもリズミカルに踊ってみせたかと思えば、尺八のように鋭い息吹を聴かせ、あるいは音程の揺らぎによって陰影を表現し、つま弾かれると同時に消え去っていくピアノの音とユニークな対比をみせている。(江藤光紀)

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