eぶらあぼ 2014.11月号
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60ユンディ・リ(ピアノ)シューマンの大作に聴くユンディの新境地文:飯田有抄『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』 特別上映会絶頂期のパリ・デビュー公演、“完全版”初公開!文:岸 純信(オペラ研究家)11/1(土)14:00 横浜みなとみらいホール11/6(木)19:00、11/10(月)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 10/25(土)上田市交流文化芸術センター、10/28(火)アクトシティ浜松、10/30(木)ハーモニーホール福井、11/2(日)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館、11/3(月・祝)高岡市民会館、11/4(火)武蔵野市民文化会館、11/8(土)愛知県芸術劇場コンサートホール、11/9(日)ザ・シンフォニーホール、11/11(火)札幌コンサートホールKitara、11/14(金)東京エレクトロンホール宮城問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-304011/19(水)11:00 14:00 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール12/18(木)11:00 14:00 よみうり大手町ホール問 樂画会チケットデスク03-3498-2508 http://gakugakai.com 中国が生んだ世界的ピアニスト、ユンディ・リがこの秋、日本各地でリサイタルを行う。全国ツアーは2010年のショパン・イヤー以来だ。 ユンディは今年32歳。14年前のショパン国際ピアノコンクール優勝後、ドイツでさらなる研鑽を積むと同時に世界中でリサイタルを重ね、有名オーケストラとの共演や、母国での教育的役割を果たす中、彼の“ショパン弾き”というイメージは強化されてきた。 だが、2012年にはベートーヴェンの3大ソナタ(悲愴/月光/熱情)のCDを、そして今年4月にはやはりベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ハーディング指揮、ベルリン・フィルとの共演)およびシューマンの大作「幻想曲」のCDをリリースした。2枚続けて発表したドイツ古典・ロマン派のアルバムを通じて、ニュアンスに富む繊細な表現に加え、誠実で端正な構築力をも披露したユンディは、新たな魅力でファンの心を掴んでいる。 歌の女神、マリア・カラス(1923-77)は数々の名録音を遺したが、映像はごく少数しか観ることが出来ない。しかも、その殆どが後半生に撮られたもの。最盛期の1950年代に大歌劇場で演じた“オペラの本編”となると、思い浮かぶのはただ一つ——『マリア・カラス 今回のツアーには、横浜みなとみらいホールや2度のサントリーホール公演が含まれる。どちらにもCDで録音したシューマンの「幻想曲」、ベートーヴェンの「熱情」がプログラミングされている。横浜とサントリー初日では「月光」とショパンのノクターン1番・2番が、サントリー2日目ではリストの「タランテラ」やショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」も加わる。多彩な曲目でさらなる輝きを放つユンディと出会うことができそうだ。伝説のオペラ座ライヴ』に観る《トスカ》第2幕である。 18世紀末のローマで警視総監に狙われた歌姫トスカ。恋人の命と引き換えに「身体を差し出せ」と強要されるが、ナイフで発作的に相手を刺し殺す…。この映像に観るカラスは、プッチーニのスリリングな音楽を完全に御して、誰よりも鋭く、激しく、哀れである。名アリア〈歌に生き、恋に生き〉の絶唱は勿論だが、短い一節でも心の揺れを色濃く伝え、身体をよじる一瞬ですらも美しい。 来る11月に、この名演の“完全版”がスクリーンで公開される。それは、オペラの世界に浸りたい人にはまたとない機会。大空間で観てこそ判る迫力というものもあるからだ。映像の前半は同日収録のガラコンサートから。アリア1曲でもカラスの精妙な歌いぶりは群を抜き、客席の模様やステージ袖の様子も窺えるので、“社交界の縮図”を覗き見するような面白さもある。特にベッリーニの〈清らかな女神よ〉で合唱団が先走った途端、腕でエレガントに制してから団員たちを一瞥するカラスの姿は「ドラマを超えるリアリズム」の極致。身に着けたネックレスの燦然たる輝き—本物の証—と共に、忘れ得ぬ瞬間となるだろう。 ©Chen Man/Mercury Classics『マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ』 ©ina
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