eぶらあぼ 2014.11月号
54/233

51樋ひのうえ上眞まお生(ピアノ)リャプノフの魅力をぜひ知ってもらいたいと思います取材・文:東端哲也Interview ピアニストというより職人系の美術家を思わせるタフなルックスが印象的な樋上眞生。大曲揃いのデビュー・アルバムも大胆だ。特に「5人組」の主柱バラキレフの門下生にあたる知られざる作曲家、リャプノフのピアノ・ソナタが耳を惹く。 「学生時代からロシア系作曲家の作品が持つ泥臭い雰囲気が好き。せっかくのデビュー盤なので、日本であまり弾かれてはいないが素晴らしい、そんな作品を探していたところ偶然ネットでみつけて、これだ!と思いました。長大だけれどロマンティックで、男らしさも感じられる。これをきっかけに皆さんにもっと知ってもらえたら嬉しい」 「5人組」繋がりではムソルグスキーの代表作である組曲「展覧会の絵」も。 「実はもともと、ヴィルトゥオーゾ的なホロヴィッツ版でこの曲と出会って弾き始めたので、原典版は今回が初めて。全く違う作品として取り組みました。音楽的には〈プロムナード〉の変奏を挟んで展開する、かっちりとした構成の前半部分をどう作っていくのかが自分としては課題でした。テクニック的には何といっても〈リモージュ 中央広場〉を巧く弾ききれるのかが山場でしたね」 その2曲のロシアものに挟まれるようにして、リストの「巡礼の年 第2年『イタリア』」より第7番「ダンテを読んで」を収録。 「当初はバラキレフの超難曲『イスラメイ』を収録する予定だったのですが、指を痛めてしまい断念。がっつりとしたリストがロシア系と同じくらい好きだったことと、ちょうどレコーディング前に演奏会でとりあげて、自分の中で旬の作曲家だったので選びました。コンクールで弾いた時の反応も良く、自分に合っているなと感じる作品でもあります。でも結果としてメインディッシュが3皿も並ぶようなアルバムになりましたね(笑)」 挑戦的でありながら、名刺代わりに相応しい、新人らしく真摯な姿勢に溢れた1枚だ。 「学生時代(京都市立芸術大学)はあまり練習熱心なタイプではなかったのですが、10年程前にピアノの師匠に言われた『君は意識して頑張らなくても、自然体でいることで十分個性が発揮できている』という言葉が励みになって、ここまで頑張ってきました。自分のことを決して“一流”ピアニストとは思っていませんが、だからといって“二流”に甘んじるつもりはなく、むしろ“三流”だけど何か特別に光るものを持っている、そんな演奏家を目指したい」 11月には、榎本玲奈、岩本きよら、とともにCD発売記念ジョイントコンサートに出演。樋上のヴィルトゥオジティを生で聴けるチャンスだ。こちらも楽しみにしていよう。11/21(金)19:00 Hakuju Hall問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jpヴィレム・ブロンズ&清水若菜 ピアノ・デュオ・リサイタルソロと連弾で紡ぐシューベルトの世界文:笹田和人左:ヴィレム・ブロンズ 右:清水若菜 深い精神性を湛えた演奏で聴衆を魅了するオランダの名ピアニスト、ヴィレム・ブロンズ。ジュネーヴ音楽院を一等特賞とパデレフスキー記念フィリピネッティ賞を受賞して卒業し、リサイタル活動はもちろん、ベルナルト・ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管など世界の一流楽団と共演を重ねてきた。その一方で、室内楽活動や教育活動にも力を注ぎ、2003年にはオランダ王室から叙勲。1982年に初来日し、96年からは毎年わが国を訪れ、ステージのみならず、公開レッスンやレクチャーを通じて、後進の指導にも努めている。 今回は彼の愛弟子である俊英・清水若菜と、オール・シューベルト・プログラムで臨むデュオ・リサイタル。清水は13歳の時にブロンズのマスタークラスに初参加、現在はアムステルダム音楽院修士課程でさらなる研鑽を積んでいる。今回は、ソナタ第19番を清水が、同第20番をブロンズがそれぞれソロで弾き、連弾で幻想曲ヘ短調(D940)を披露。師弟ならではの、温かさと厳しさに満たされたステージになりそう。榎本玲奈・樋上眞生・岩本きよら~CD発売記念~ piano joint concert11/16(日)13:30 文京シビックホール(小)問 及川音楽事務所03-3981-6052http://oikawa-classic.comCD『リャプノフ/ ピアノ・ソナタ』Beltàレコード YZBL-1039¥2381+税

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です