eぶらあぼ 2014.11月号
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41紀尾井 明日への扉 6 山宮るり子(ハープ)12/1(月)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp山宮るり子(ハープ)ハープの俊英、いよいよ本格的に活動開始!取材・文:宮本 明Interview 元ウィーン・フィルのハープ奏者グザヴィエ・ドゥ・メストレの愛弟子で、2011年リリー・ラスキーヌ国際ハープ・コンクールで日本人初の優勝を遂げた注目のハーピスト・山宮るり子が、紀尾井ホールの『明日への扉』に登場する。東京での初リサイタルだ。 「曲目には、ハープのオリジナル作品と編曲作品の両方を選びました。『モルダウ』や『愛の夢』のような有名曲で、ピアノやオーケストラの原曲とはまた違った良さを。さらにトゥルニエやグランジャニーなど、自身もハーピストだった作曲家の、ハープの特徴を生かした曲で、この楽器をより知っていただけたらなと思っています。ハープというとアルペッジョの華麗なイメージがあるかもしれませんが、たとえば共鳴板を叩いたり、調弦用のハンマーを使って音程を変えたりと、効果音的な要素や視覚的なアクセントのある作品も選んだので、そんなところもぜひ楽しんでください」 モーツァルトの幻想曲K.397ほか、自身の編曲も含まれている。 「ピアノ譜は、だいたいはハープで弾けるのですが、ピアノの黒鍵に相当する弦がハープにはなく、半音をペダルで操作するので、半音階が多いと弾けない箇所もあります。それをアレンジして弾きやすいようにしている感じです」 4歳からハープを習い始め、故郷・新潟の高校を卒業後、日本の音楽大学には進まずにハンブルクに渡ってメストレに師事した。 「中学3年でメストレ先生のマスタークラスを受けた時、ハンブルクへの留学を勧められました。的確なことを簡潔にずばずば言ってくださる先生で、フランス人はせっかちなのか、レッスンも短くて、結構あっさりしてるんですね(笑)。そのスタイルが大好きで」 優勝したラスキーヌ・コンクールの2年前にはミュンヘン国際コンクールでも2位に入賞している。 「ミュンヘンの2位で、私はもうコンクールは終わりと思ったのですが、先生がまだ受けてみろ、優勝しろと(笑)。ラスキーヌは前回1次予選で落ちてしまったので、そのリベンジという気持ちもありました。ファイナルは自分でも納得できる演奏ができたので、手応えはありましたね。優勝して演奏の場も広がりましたから、やはり受けてよかったです」 現在はケルン在住。来春に国家演奏資格の最終試験を受けて卒業する。来年夏には留学を終えて帰国予定というから、今後は日本でも彼女の活躍をたびたび耳にすることになるのだろう。いわばその第一歩のリサイタル。若い才能のはばたきに注目したい。11/14(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp今川映美子(ピアノ) シューベルティアーデ Vol.12ツィクルスの総決算は“最後のソナタ”で文:飯田有抄©武藤 章 2006年にスタートした『今川映美子シューベルティアーデ』が最終回を迎える。シューベルトのピアノ・ソナタ全曲演奏を主眼とした今川の取り組みは8年間に及んだ。孤独や愛情、優雅さや哀しみといった人の心の機微を映し出すシューベルトのピアノ曲を、今川は過去11回のコンサートを通じて大切に奏でてきた。ウィーン国立音大での研鑽、数々のコンクール入賞記録やステージ経験を彼女に与えたヨーロッパでの体験すべてが、今川の深みある呼吸感や音色、安定感のある構成力となって彼女のシューベルトの世界を築いている。最終回に演奏されるのは、憂いある表情を見せるソナタ第12番へ短調D625、非常に華やかな曲想を持ち4楽章構成のソナタとも受け取れる「さすらい人幻想曲」、そしてシューベルトが生涯に残したピアノ・ソナタで最後の番号を持つ、長大にして抒情的なソナタ第21番変ロ長調D960だ。ツィクルスの完結に相応しい魅力あるプログラムをたっぷりと味わいたい。

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