eぶらあぼ 2014.11月号
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32ポール・マクリーシュ(指揮) 東京都交響楽団ホグウッドに捧げる2夜文:オヤマダアツシオペラ《アイナダマール》日本初演グラミー賞にも輝いた人気オペラが初上陸文:江藤光紀第778回 定期演奏会Bシリーズ11/20(木)19:00 サントリーホール第779回 定期演奏会Aシリーズ11/21(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp11/15(土)、11/16(日)各日14:00 日生劇場問 日生劇場03-3503-3111 http://www.nissaytheatre.or.jp ポール・マクリーシュの名前を知る方は、イギリス系古楽シーンに精通されているはずだ。ガブリエリ・コンソー 一昨年・昨年とドイツ現代音楽界の巨匠アリベルト・ライマンのオペラを紹介して話題を呼んだ日生劇場。今年はユダヤ系アルゼンチン人の作曲家オスバルド・ゴリホフの《アイナダマール》(涙の泉)を日本の聴衆に問う。 詩人として活躍し、画家ダリなど時代の才人たちと親交を結んだフェデリコ・ガルシア・ロルカは、フランコ政権によるスペイン内乱のあおりを受け、わずか38歳の若さで殺される。ロルカの悲劇を題材にゴリホフが作曲した本作は、2003年にタングルウッドでの初演後、ピーター・セラーズの助言を取り入れた改訂を経て、10年ほどの間に世界各国で数多く上演された人気作だ。リリースされたCDはグラミー賞なども獲得している。 この成功は、なんといってもイベリア半島のエキゾチックなリズムや音楽を大胆に取り入れ、ラテン系らしい情念の劇的な盛り上がりを構築した点に起因するのではなかろうか。陰りを帯ト&プレイヤーズの創設者&リーダーとして先鋭的な演奏をCDでリリースしてきた彼だが、意外なことに今回が初来日。惜しくも先頃天国へと召されたクリストファー・ホグウッドの代役として、都響の指揮台に登場する。 ルネサンスやバロック音楽のスペシャリストだと思われているマクリーシュだが、実は多彩なレパートリーを有し、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ほかヨーロッパ各地のオーケストラにも客演。都響の11月定期ではホグウッドが指揮をするはずだった19~20世紀音楽のプログラムをそのまま引き継いで、斬新な演奏を聴かせてくれる。 バレエ組曲としてオーケストラや吹びた歌や、フラメンコの熱狂的な舞踏によって召喚される民俗的な生命力がオペラを再生させる。これは同じアルゼンチンの作曲家ピアソラを思わせるものでもある。 物語はロルカ(11/15・清水華澄、11/16・向野由美子)の死を女優マルガリータ・シルグ(11/15・横山恵子、11/16・飯田みち代)の視点から見るという形をとっている。演奏は昨年のライマン・プロジェクトで見事な演奏をみせた読売日本交響楽団、指揮はリズ奏楽で親しまれているコープランドの「アパラチアの春」は、13楽器のためのオリジナル・バレエ音楽版で演奏。まだ10代後半のR.シュトラウスが作曲した「13管楽器のためのセレナード」は、管楽アンサンブルの隠れた傑作であり、吹奏楽ファンにも知って欲しい作品だ。同時に都響のメンバーそれぞれ(特に管楽器)へ、スポットライトが当たるプログラムだと言っていい。 そしてメンデルスゾーンの「宗教改革」は、この作曲家の研究・校訂を進めていたホグウッドによるスコアが使われる。最高の供養であると同時に、マクリーシュの知名度を上げる2夜となるだろう。ミックな音楽では思いのほか身軽なところも見せてくれる広上淳一。演出も粟國淳が担当するとあって密度の濃いステージが期待されよう。前半に俳優・長谷川初範によるロルカについてのレクチャーが予定されており、作品への理解を深めてくれる。ポール・マクリーシュ ©Ben Wright飯田みち代横山恵子広上淳一 Photo:Greg Sailor粟國 淳

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