eぶらあぼ 2014.11月号
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29ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団マーラー撰集Ⅴ 夜の歌作品本来の姿を伝える若きマエストロの魅力文:飯尾洋一パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団ブラームス・シンフォニック・クロノロジーいよいよロマン派の王道へ文:江藤光紀第665回 東京定期演奏会11/14(金)19:00、11/15(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp12/10(水)19:00 ピアノ協奏曲第1番,交響曲第1番12/11(木)19:00 ヴァイオリン協奏曲,交響曲第2番 他12/13(土)15:00 ピアノ協奏曲第2番,交響曲第3番 他12/14(日)15:00 ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲,交響曲第4番 他東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp ピエタリ・インキネンと日本フィルのコンビが好調だ。11月には『マーラー撰集』のシリーズ第5弾として、マーラーの交響曲第7番「夜の歌」とシベリウスの交響詩「大洋の女神」を披露する。 日本フィル首席客演指揮者を務めるインキネンはフィンランドの出身。母国の作曲家であるシベリウスはもちろ パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマー・フィルが東京オペラシティに帰ってくる! パーヴォが同団の芸術監督に就任して10年。まずベートーヴェン・ツィクルス、続いてシューマン・ツィクルスと、彼らの放つ鮮烈なプロジェクトは大きなセンセーションを巻き起こしてきた。「ピリオドといえば古典派まで」というイメージを打ち破り、モダン・オーケストラにピリオド奏法を応用しロマン派の世界へと踏み込んで、聴きなじんだ名曲の思いがけない一面を明らかにする。それも学術的な再現ではなく、21世紀の耳を納得させる極上のエンターテインメントとして。それは「演奏は進化しうる」ということを私たちに身をもって示した出来事だったようにも思う。 さて、彼らの旅路もとうとうロマン派の“本丸”にたどり着いた。『ブラームス・シンフォニック・クロノロジー』は4曲の交響曲だけでなく、主要管弦楽曲や協奏曲を彼らのスタイルで一挙丸ごと味んのこと、マーラーやワーグナーにも積極的に取り組んでいる。2008年にニュージーランド交響楽団の音楽監督に就任。同楽団とは多くのレコーディングで好評を博している。また、昨年はパレルモでワーグナーの《ラインの黄金》《ワルキューレ》を指揮するなど、コンサートとオペラの両面にわたって、国際舞台での活躍を広げている。日本フィルとはこれまでにたびたび好演を聴かせてくれていわってしまおうという、これまでにも増して大胆な企画である。12月10日から全4回のツィクルスは創作の時系列も押さえており、ブラームスの心境の深まりをも描き出そうという野心が感じられる。2曲のピアノ協奏曲を弾くのはラルス・フォークト(12/10,12/13)。すっきりとした造形美は彼らのサウンドとも相性るが、表層的なスペクタクルを追求するのではなく、整然とした響きのなかから作品本来の姿を伝えてくれるのが彼の魅力といえるだろうか。マーラーのような大規模作品でも、緻密で集中度の高い演奏を期待できそうだ。 今回、特に興味深いのは、マーラーのなかでもとりわけ謎めいた作品である交響曲第7番「夜の歌」に、インキネンがどうアプローチするか。一つの作品に様々な感情表現が込められると同時に、時代の一歩先を行くようなパロディ性が込められており、作品には様々な解釈の余地がある。発見の多いインキネン流「夜の歌」を聴けるのではないだろうか。が良さそうだ。ヴァイオリン協奏曲では近年一層鋭角的な音作りをするクリスティアン・テツラフ(12/11,12/14)が、ドイツ・カンマー・フィルとどのような化学反応を起こすか。ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲では同団首席チェロのターニャ・テツラフ(12/14)が加わり、極めて珍しい兄妹競演が実現する。ピエタリ・インキネン ©浦野俊之パーヴォ・ヤルヴィ ©Julia Bayerラルス・フォークト ©Felix Broedeクリスティアン・テツラフ ©Giorgia Bertazziターニャ・テツラフ ©Giorgia Bertazzi
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