eぶらあぼ 2014.11月号
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て、そこから新たな芸術を生み出したいという想いがあった。そして、東日本大震災から3年たって、いまだに閉塞感から抜け出したとは言えない日本を、音楽の力で元気にしたいという想いも共通していた。その想いに応えて、チェロの堤剛、笙の宮田まゆみ、能管の一噌幸弘など、それぞれのジャンルを代表する演奏家も集まった。歌舞伎の中村福助は演出、中村児太郎は舞踊で参加する。「卑弥呼を題材に選んだのは、かねてから中村福助さんが卑弥呼を踊りたいとおっしゃっていたからです。福助さんはいま病気療養中ですが、その想いを児太郎さんが受け継いでくれて、歌舞伎の踊りの枠を超えた世界にも挑戦してくれると思います」と菅野。この8月には音楽が完成し、サントリーホールでリハーサルが行われた。コンサートホールの舞台の上には、上手にチェロとコントラバス、下手には笙、能管、尺八、琵琶など邦楽器が並ぶ。この見慣れない舞台配置がどのような音を作りだすのか、その期待も高まる。このリハーサルには聲明と舞踊は参加していなかったのだが、それが加わった時さらに興味深い世界が生まれそうだ。■音と踊りで卑弥呼を表現ヴァイオリンの大谷は演奏で、舞踊の中村児太郎は踊りで、それぞれ卑弥呼を表現することになる。「いま初めてその音楽を聴かせていただいて、ますます身が引き締まる想いです。父(福助)の願いも理解しているつもりですし、これまでの歌舞伎の踊りだけでなく、新しい踊りの世界に挑戦したいと思っています」 と中村児太郎はリハーサルの時に語り、また大谷康子も公演に向けての抱負を次の様に述べた。「ヴァイオリンで卑弥呼を表現するのはとても難しいことだと思いますが、児太郎さんと協力して、魅力的な世界を作り出したいと思っています。客席にまで降りて演奏することもあるかもしれませんし、舞台と客席が一体となった“祝祭”を作り出せれば良いですね」 舞台装置もシンプルで、台詞も歌もない。それだけに音楽の力がストレートに客席に伝わる作品となりそうだ。日本を代表する演奏家、舞踊家たちによる音楽への想いを、日本を代表するコンサートホールの音響の中で受け取ってほしい。文:片桐卓也古代祝祭劇「太陽の記憶─卑弥呼」(世界初演)企画中村福助、菅野由弘、大谷康子、常磐津文字兵衛演出:中村福助 作曲・指揮:菅野由弘ヴァイオリン:大谷康子 中棹三味線:常磐津文字兵衛チェロ:堤剛 舞踊:中村児太郎 舞踊・振付:中村梅爾出演花柳達真(舞踊・振付)、花柳昌鳳生、花柳静久郎、藤間直三、水木扇升、藤蔭美湖、五條珠雀(以上、舞踊)宮田まゆみ(笙)、岩亀裕子(龍笛)、一噌幸弘(能管)、石垣征山(尺八)、首藤久美子(琵琶)、黒川真理、後藤幹子、吉川あいみ、日吉章吾(以上、箏)、平田紀子(十七絃)、望月太喜之丞(邦楽打楽器)大本山増上寺式師会(聲明)海野幹雄、富岡廉太郎、谷口宏樹、苅田鉄平、小野木遼、飯島哲蔵(以上、チェロ)、星秀樹、岩田貴弘、柿沼隼、橋爪裕貴(以上、コントラバス)、神田圭子(洋楽打楽器)、山口綾規(オルガン)日程11/18(火)19:00 サントリーホールS 9,000円 A 7,000円 B 5,000円問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017http://suntory.jp/HALL他公演11/24(月・祝振)15:00 札幌コンサートホールKitaraS 7,000円 A 5,000円 U25シート(A) 3,000(1989年以降生まれの方が対象)問 Kitaraチケットセンター011-520-123411/26(水)14:00福岡シンフォニーホールS 7,000円 A 5,000円(学生 2,500円)問 アクロス福岡チケットセンター092-725-9112Information左から中村児太郎、菅野由弘、大谷康子、常盤津文字兵衛中村児太郎

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