eぶらあぼ 2014.11月号
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190CDSACDSACDCD聖人、そして罪つみびと人~F.リスト ピアノ作品集/高橋礼恵J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲/古川展生ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ/河村尚子池辺晋一郎:交響曲第8番・第9番&ピアノ協奏曲第3番リスト:ペトラルカのソネット第104番、2つの伝説、エステ荘の噴水、ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲 他高橋礼恵(ピアノ)J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲)古川展生(チェロ)ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、チェロ・ソナタ、前奏曲op.23-10・op.23-2河村尚子(ピアノ)イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団クレメンス・ハーゲン(チェロ)池辺晋一郎:交響曲第8番「大地/祈り」・第9番、ピアノ協奏曲第3番~左手のために「西風に寄せて」金聖響 下野竜也 野津如弘(以上指揮) 舘野泉(ピアノ) 幸田浩子(ソプラノ) 宮本益光(バリトン) 他ナミ・レコードWWCC-7764 ¥2500+税10月22日発売ソニー・ミュージックダイレクトMECO-1025(2枚組) ¥4000+税収録:2013年10月、プラハ,2014年5月、エルマウ(ライヴ)ソニーミュージックSICC-10214 ¥2800+税収録:2013年3月、横浜, 2013年9月,12月、東京(ライヴ) カメラータ・トウキョウCMCD-99083~4(2枚組) ¥3500+税「聖人、そして罪人」という印象深いタイトルのリスト作品集。高橋礼恵は通常の“リスト弾き”が誇る華美な超絶技巧の先へと聴き手を誘い、作曲家の深い詩情・思想の鮮烈な光と闇を伝える。自然な音楽作りでありながら、驚く程の集中度で聴き手を惹き込む。高橋はボン国際ベートーヴェンコンクール第2位、エリーザベト王妃国際コンクールファイナリストに輝くなど実力は折り紙付き。ベルリン芸大・大学院を修了し、ベルリンを拠点にヨーロッパ各国での活躍が目覚ましい。このリスト・アルバムで彼女の音楽の虜になる人は、日本でもさらに増えるに違いない。(飯田有抄)過去に何曲かは録音しているものの、ここに来て古川展生、満を持しての「無伴奏」全曲録音。デビュー15周年記念アルバムである。演奏は圧倒的な完成度を誇る。基本的には速めのテンポを取り、急速楽章ではアーティキュレーションの工夫により素晴らしい運動性を見せ、緩徐楽章では過剰なロマン的表情付けを排しながら情感もたっぷり。ピリオド奏法に色目を使うでもなく、さりとてモダン楽器による旧来的な解釈を踏襲している訳でもない。敢えて言えば「古川展生流バッハ」とでも言うべきかも知れないが、この音楽的説得力は尋常ではない。また、録音が実に美しい。(藤原 聡)河村尚子の日本デビュー10周年を記念した、ソニー(RCA)における4枚目のアルバム。初のライヴ録音でもある。まずは1901年作の協奏曲、室内楽曲、独奏曲の共通項を浮き彫りにした構成が、清新な興趣をもたらす。演奏自体は、過剰な力と贅肉を取り去り、楽曲が本来もつシャープさ、優美さ、瑞々しさを浮上させながらも、濃密かつ雄弁。明確なタッチの各音に表情を宿しつつ、フレーズ全体は淀みなく流れるピアノが実に見事だし、チェコ・フィルの芳醇な弦、ハーゲンの締まった表情も心に残る。これらが真の名曲たることを改めて知らしめる充実の1枚。(柴田克彦)オペラや劇伴では旺盛な創作力を見せている池辺が、昨年久々に2つの交響曲を発表した。3月11日という体験後、「個」や「社会」から「自然」へと関心が移った、と自身が述べているように、語り口やスタイルはより平明になり、ヒューマニスティックなメッセージが全面に打ち出された。地響きが祈りへと回帰する第8番。バリトンとソプラノが長田弘の詩句を歌い上げる第9番も、悠然としたテンポで大自然の折々の表情とそこから喚起される感興をテーマにしている。一方、舘野泉のために書かれたピアノ協奏曲第3番はリリカルな気分を湛えつつ始まり、ソロが管弦楽とドラマティックに絡み合う。(江藤光紀)

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