eぶらあぼ 2014.11月号
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188CDCDCDCDジャン=フィリップ・ラモーの肖像/崎川晶子松田華かのん音デビュー/松田華音柴田南雄とその時代 第三期幻想交響曲/モントゥー&ウィーン・フィルラモー:クラヴサン曲集第1巻より2曲、クラヴサン曲集より4曲、新クラヴサン組曲崎川晶子(チェンバロ[クラヴサン])ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」/ショパン:バラード第1番,英雄ポロネーズ/ラフマニノフ:「音の絵」第5番・第6番・第9番/パッヘルベル:カノン(ピアノ編曲版) 他松田華音(ピアノ)柴田南雄:安土幻想、伴天連歌、絃づくし、ガムランのためのエチュード、富士山四章、さくら、シアター・ピース集-追分節考no.41,萬歳流しno.45,石ニ聞クno.117,シンフォニアno.25,交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」no.48 他ベルリオーズ:幻想交響曲/ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)ピエール・モントゥー(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団パリ音楽院管弦楽団コジマ録音ALCD-1146 ¥2800+税11月5日発売ユニバーサルミュージックUCCG-1689 ¥2800+税フォンテックFOCD-6041/6(CD3枚+DVD3枚組) ¥9524+税TOWER RECORDSPROC-1578 ¥1143+税今年は仏バロックの巨匠、ジャン=フィリップ・ラモーの没後250年。崎川は、ラモーが80年に及ぶ長い生涯に残した、膨大な鍵盤楽器のための佳品から22曲を選りすぐった。その上で、レプリカではなく、名工クリスティアン・クロルにより、1776年に製作されたオリジナルのクラヴサンを駆って録音。歴史的な楽器だからと腫れ物のような扱いをせず、真正面から対峙し、時に底鳴りのする分厚い響きから、ヴィンテージ・ワインのごとき滋味を引き出してみせる。名器の豊かな美音を縦糸、弾き手の深い音楽への愛情を横糸に紡がれる絶妙のハーモニー。記念の年に相応しい1枚に仕上がった。(寺西 肇)ドイツ・グラモフォンからのデビューで注目を集めている、松田華音。わずか6歳でモスクワのグネーシン音楽学校に留学、今年からモスクワ音楽院で学ぶ18歳だ。輝きを持つ音がまず耳を惹きつけ、次に芯の通った音楽表現が心を捉える。豊かで大胆な感性の持ち主なのだろう。粒立ちの良い音で奏でられるベートーヴェン、堂々としながら自然な抑揚を持つショパンのバラード第1番は爽やかな感動を与える。そして得意のロシアものは、繊細な音から、可憐な彼女が弾いているとは思えないほどの骨太な音まで、表現が実に幅広い。録音を聴けば、この彗星のごときデビューの理由がよくわかるだろう。 (高坂はる香)音そのものを鷲掴みにするような、先鋭的な器楽作品があるかと思えば、言葉が胸に染み入ってくる歌曲もある。プロにしか手を出せぬ超難曲もあれば、アマチュアが気軽に口ずさめる旋律も。さらに、不思議な懐かしさで私たちの心を捉える一方で、音律すら異にする空間を現出させる。20世紀現代日本音楽の巨匠・柴田南雄が紡ぎ上げた音楽は、決して一括りで表現できない。2010年に第一期が発表されて以来、大きな反響を呼んだシリーズも、今回で完結。CDとDVDが各3枚という圧倒的なボリュームと、純子夫人をはじめとする関係者の貴重な証言により、多面的な響きの宇宙を俯瞰する。(寺西 肇)2014年が没後50周年にあたるフランス出身の名指揮者、ピエール・モントゥー。「幻想交響曲」は彼にとって十八番中の十八番で、SP時代から数えて5種のセッション商業録音を残しており、このウィーン・フィルとの録音は4回目、1958年のステレオ録音。若いときの演奏ほどの迫力はないが、オーケストラの美音は格別で、デッカ・レーベルの立体的な録音も見事。「火の鳥」組曲も、「春の祭典」初演指揮者であるモントゥーだけに、その歴史的意義は大きい。パリ音楽院管弦楽団の音色は芳しく、最初期のステレオ録音から、古き良き時代の残り香がたちのぼる。(山崎浩太郎)
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