eぶらあぼ 2014.11月号
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184CDCDCDCDピアノ・ソロ/ファジル・サイトスティ歌曲集~ある人生の歌/又吉秀樹マンハイム宮廷の栄華~シュターミッツの管弦楽/響ホール室内合奏団火の鳥&運命/サンティ&N響ファジル・サイ:セス、クムル、ブラック・アース、パガニーニ・ジャズ、トルコ行進曲“ジャズ”、ナスレッディン・ホジャの4つの舞曲、ニーチェとワーグナー 他ファジル・サイ(ピアノ)トスティ:魅惑、理想、最後の歌、もう君を愛していない、さようなら、ある人生の歌、アマランタの四つの歌、慰め 他又吉秀樹(テノール)牧口純子(ピアノ)ヨハン・シュターミッツ:クラリネット協奏曲、マンハイム交響曲第1番~第3番/カール・シュターミッツ:ヴァイオリンとクラリネットのための協奏曲タラス・デムチシン(クラリネット、指揮)ナザール・ヤスニツキー(ヴァイオリン)響ホール室内合奏団 他ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」ネッロ・サンティ(指揮)NHK交響楽団エイベックス・クラシックスAVCL-25849 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7765 ¥2500+税収録:2013年8月、福岡、末永文化センター(ライヴ)コジマ録音 ALCD-3100 ¥2800+税収録:2009年11月、NHKホール,2010年10月、サントリーホール(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-2198 ¥2816+税強い個性と圧倒的な技巧を持つ演奏家による自作曲ならではのオリジナリティが宿る。前半は「ブラック・アース」をはじめシリアスな作品が続く。娘の誕生による幸福感から生まれた「クムル」では、美しさ、微かな悩ましさが複雑に絡み合う。中盤には、研ぎ澄まされたセンスが光る十八番の「トルコ行進曲“ジャズ”」などジャズ風の楽曲から。「ナスレッディン〜」では、複雑な拍子で生々しくミステリアスな音楽が刻まれる。二人の天才に想いを馳せた「ニーチェとワーグナー」には、サイの哲学感、人生観が滲み出るかのようだ。奇才の頭の中を覗くような楽しさがあるアルバム。(高坂はる香)9月の二期会《イドメネオ》題名役などの活躍ぶりで、このところ注目度急上昇の期待の若手テノールのデビュー盤。トスティを選んだのには、2012年トスティ歌曲国際コンクール3位という経歴も関連しているだろう。ボディのしっかりした声質は、テノールにとってはかなり低めの音域も駆使するトスティと好相性。上は「アマランタの四つの歌」にアルバム中の最高音である変ロ音があるぐらいで、テノールの華やかな高音の欲求をいったん封印して、豊かなメロディを聴かせる姿勢は好感。ロンドン時代の英語の歌や全8曲からなる「慰め」など、接する機会の少ないナンバーも収録しているのは貴重。(宮本 明)18世紀の音楽先進地・マンハイム宮廷を舞台に活躍した、シュターミッツ親子の作品集。特に父カールの作品の録音は珍しい。ソロと指揮を担当するデムチシンは、ウクライナ出身で現在は九響首席を務めるクラリネットの名手。たおやかな美音と的確なリードぶりで、マンハイム様式に特徴的なアーティキュレーションのコントラストをきっちり描き出し、これらの作品の魅力を掘り下げてゆく。そして、北九州ゆかりの名手で組織された響ホール室内合奏団は、彼の思い入れを汲み取った上で、時代に相応しい演奏様式をきっちりと踏襲。瑞々しい音色で、好演を聴かせている。(寺西 肇)マイスター・ミュージックによるネッロ・サンティのライヴ録音シリーズ、今回はN響との「火の鳥」と「運命」。実に“サンティ的”と言うべきユニークな名演である。前者では総じてかなり遅めのテンポを取るが、全く弛緩することはない。細部の表情付けの絶妙さに注目。終曲の落ち着き払った風格なども見事だ。対して「運命」では、休符の生かし方が特徴的で絶妙な運命主題の提示から引き込まれるが、全曲通じて推進力と威容を兼ね備えたすばらしい演奏と思う。終楽章コーダでのアッチェレランドも効果的。派手さはないが、じっくりと“音楽そのもの”に浸るには最高の演奏だ。(藤原 聡)

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