eぶらあぼ 2014.10月号
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91佐藤卓史(ピアノ) シューベルトツィクルス 第2回シューベルトの内奥に迫る一大プロジェクト文:飯田有抄東京文化会館 ニューイヤーコンサート 2015 《響の森》 Vol.35新年の幕開けには王道の名曲がふさわしい文:宮本 明10/10(金)19:00 王子ホール問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp2015/1/3(土)15:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp 誠実さに満ちた深い作品解釈と、磨き抜かれた演奏技術が光るピアニスト佐藤卓史は、今もっとも期待される若手実力派の一人だ。そんな佐藤が、今年の春からスタートさせた一大プロジェクトが『佐藤卓史シューベルトツィクルス』である。短命ながら多作家であったシューベルトのピアノ独奏曲やピアノを含む室内楽曲を全て演奏するというシリーズで、15年程をかけ全30回で網羅しようという意欲的な取り組みである。これまでに国内外を問わず数々のコンクール受賞歴に輝く佐藤だが、中でも2007年にドイツのドルトムントで行われた第11回シューベルト国際コンクール優勝や、翌年のドイツ各地でのオール・シューベルト・プログラムによるリサイタル開催といった豊かな経験は、このツィクルスに繋がる重要 今年6月から改修のために休館していた東京文化会館が12月にいよいよ再開。明けて2015年は、毎年1月3日恒例のニューイヤーコンサートで始まる。指揮は同ホール音楽監督・小林研一郎。2012年の就任以来、この立場でホームグラウンドの指揮台に立つのは初めてだという。管弦楽は東京都交響楽団。 ニューイヤーといえばウィンナ・ワルツが何となく相場。それはそれで楽しいけれど、ここでは毎年、王道のクラシック名曲をがっつり聴けるのがうれしい。クラシックの真髄にどっぷり浸りたいファンはもちろん、家族で楽しむクラシック入門にもうってつけだ。 ワルツ「春の声」で新年気分も味わいつつ、ヴァイオリン独奏に美しき実力派・木嶋真優を迎えての「チャルダッシュ」「タイスの瞑想曲」「ツィゴイネルワイゼン」で、超絶技巧と胸に迫る美旋律という両極でヴァイオリンの魅力を堪能する。 メインはドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。炎のマエストロのな布石となっていることだろう。 初期のピアノ小品や幻想曲を取り上げた4月の第1回公演に引き続き、10月に王子ホールで開かれる第2回では、3つのピアノ・ソナタが演奏される。20歳のシューベルトがソナタというジャンルに本格的に意欲を燃やして作曲した第6番ホ短調D566(D506の「ロンド」付き)、内省的でシリアスな表情を見せる第14番イ短調D784、そしてシューベルト自身が第2楽章を好んで演奏していたというソナタ第16番イ短調D845である。学究的な好奇心を絶やさず、丁寧に紡ぎ出す佐藤の演奏で、どの楽章もじっくりと味わいたい。十八番の一つだが、コバケンが東京文化会館でこの曲を振るのは、なんと1985年1月以来30年ぶりだから意外。貴重な機会なのだ。さらに、1961年4月の同ホール落成式のメイン・プログラムも「新世界」だった。15年ぶりの大規模改修を経て再開したばかりの元祖クラシックの殿堂が迎える、初めての新年のお祝いに、歴史的にもふさわしい曲だ。木嶋真優 ©須藤敬一小林研一郎 ©満田 聡
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