eぶらあぼ 2014.10月号
83/257

80マーティン・ブラビンズ(指揮) 東京都交響楽団英国音楽のエッセンスに触れる2夜文:オヤマダアツシシューマン・クァルテット独奏者を抱く本格派若手弦楽四重奏団文:渡辺 和第776回 定期演奏会Bシリーズ10/20(月)19:00 サントリーホール第777回 定期演奏会Aシリーズ11/4(火)19:00 東京芸術劇場コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp11/30(日)14:00 第一生命ホール問 トリトン・アーツ・ネットワーク・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net イギリスの指揮者マーティン・ブラビンズといえば、多くのイギリス近現代音楽をCD録音して名前を知られ、現在は名古屋フィルの常任指揮者として評価を高めているマエストロ。東京都交響楽団にも数回客演し、プロコフィエフの交響曲などを指揮した。そのブラビンズが10/20と11/4の定期演奏会、得意とするイギリス音楽を手に都響の指揮台へと戻ってくる。 2日とも演奏されるのはウォルトンの交響曲およびヴォーン・ウィリアムズの作品。ウォルトンの交響曲第1番は尾高忠明らが取り上げて日本でも徐々に認知度が高まってきたが、2つの大戦間に生まれた“不安の時代の交響曲”としてイギリスでは大人気の名曲だ。30分ほどの中にストラヴィンスキーやヒンデミット風の硬質な抒情があふれている交響曲第2番も、演奏機会は少ないが秘曲探訪系のリスナーにはおすすめ。またイギリス民謡をモティーフにしたヴォーン・ウィリアムズ作曲の、2つの 昨今のヨーロッパでは、著名独奏者が一定期間だけ固定メンバーの弦楽四重奏に加わる「ソリスト・クァルテット」とも呼ぶべき団体の活動が目立つ。テツラフ・クァルテットやアントン・クァルテットらを筆頭に、今井信子のミケランジェロ・クァルテットから若手ユリア・フィッシャーが率いるフィッシャー・クァルテットまで、片手で足りぬほどの団体が室内楽を越えた聴衆を集めている。 シューマン・クァルテットの第1ヴァイオリンも、気鋭ソリストとして注目を浴びるエリック・シューマン。日本人を母にデュッセルドルフの音楽一家に生まれたエリックは、ドイツの学生音楽コンクールを11歳で優勝、名教師ザハール・ブロンに学び、独奏者として前途洋々たる未来を期待されていた。日本にも2000年代の末頃からN響や読響にソリストとして登場、人気も高まっていた。今シーズンも各地のオーケストラで独奏活動をするエリックだが、シューマン・「ノーフォーク狂詩曲」(日本初演の第2番はレア中のレア!)では、いかにもイギリスらしい牧歌的な雰囲気が広がる。 さらに知性派ピアニストのスティーヴン・オズボーンが切れ味のいいブリテンの協奏曲(10/20)を、人気ヴァイオリニストのクロエ・ハンスリップが狂詩曲的なディーリアスの協奏曲(11/4)を演奏することにも注目だ。一度好きになったら奥深くて逃がれられないイクァルテットはソリストの片手間仕事ではない。「弟たちが始めた弦楽四重奏団のヴァイオリンが脱退し、参加を懇願されたのです」(エリック・シューマン)。参加を決めてからは、ケルンでアルバン・ベルク弦楽四重奏団に学び、世界の主要室内楽コンクールにも参加。真っ直ぐに伸びていたスターソリストの道を絶ち、室内楽の専門家として本格的な鍛錬を積んでいる。 ソリストの才を擁しつつ、フルシーズン活動する本格派団体を目指すシューギリス音楽の入り口として、ブラビンズの名匠ぶりと都響の底力を再発見するチャンスとして、オススメの2日間だ。マン・クァルテット。今回はハイドンの第79番「ラルゴ」、アイヴズの第2番、そしてベートーヴェンの第14番という個性的なプログラムで挑む。室内楽も弾くソリストと、ソリストにもなれる室内楽奏者の違いを、とくと御賞味あれ。左から:マーティン・ブラビンズ ©Sasha Gusov/スティーヴン・オズボーン ©Ben Ealovega/クロエ・ハンスリップ ©Benjamin Ealovega

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です