eぶらあぼ 2014.10月号
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73クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団東欧の名作と秘曲を俊英コンビで文:山崎浩太郎武田忠善(クラリネット) デビュー35周年記念コンサート熟成の音色に浸りきる文:笹田和人第624回 定期演奏会 10/18(土)18:00 サントリーホール第48回 川崎定期演奏会 10/19(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp10/24(金)19:00 紀尾井ホール問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp このところ、将来有望な若手の外国人が首席客演指揮者を務めているオーケストラが増えている。都響のヤクブ・フルシャ、日本フィルのピエタリ・インキネン、そして、東響のクシシュトフ・ウルバンスキ、といったぐあいだ。 ウルバンスキは1982年ポーランド生まれ、2009年に初めて東京交響楽団の指揮台に招かれると、2年後にも再登場、その力強い指揮ぶりが評判となって、昨年4月に首席客演指揮者となった。海外ではアメリカのインディアナポリス交響楽団の音楽監督のほか、ベルリン・フィルなど世界の一流オーケストラにも客演の機会を増やしていて、雄飛を期待される存在だ。 今回の曲目は、同じポーランドの作曲家2人とチェコ1人という、東欧プログラム。キラルの交響詩「クシェサニ」は、ミニマル風の芸術音楽だけでなく映画音楽(『戦場のピアニスト』や『ドラキュラ』など)でも実績を残して昨年亡くなったこの作曲家の作品のなかでも 1977年にパリ・ベラン音楽コンクールを制し、翌年にはジュネーヴ国際音楽コンクールで日本人初の入賞。その後は自在で魅力的な独自のスタイルを武器に、ソロ・クラリネット奏者として第一線を走り続けて来た武田忠善が、デビューから35周年を迎えた。その記念のステージには、気心の知れた仲間たちを迎えて、愛奏するクラリネットのための佳品をずらりと並べ、その美音をたっぷりと披露する。 国立音楽大学を経て、フランス・ルーアン音楽院で巨匠ジャック・ランスロの薫陶を受け、特にフランス作品の解釈において、国際的に高い評価を得ている武田。多忙な演奏活動の一方で、東洋人としては初めて、パリ国立高等音楽院から招聘を受けてマスタークラスを開催するなど、世界中で後進の指導にあたっている。かたや、個人レッスンではなく、アンサンブル教育に主眼を置いた独自の指導法を取り、この点でも着人気の高いもの。ルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲は、初期の代表作。ポーランド民謡の旋律を活かしながら複雑な語法で書かれた、指揮者にとってもオーケストラにとっても腕のみせどころの多い作品である。実に成果を挙げている。 ステージでは、まず斎藤雅広(ピアノ)の共演を得て、ラボー「ソロ・ド・コンクール」とヴィドール「序奏とロンド」、ドビュッシー「クラリネットのための第1狂詩曲」、プーランクのソナタを披露。そして、水野佐知香(ヴァイオリン)と荒井章乃(同)、大野かおる(ヴィオラ)、藤村俊介(チェロ)という弦楽器の達人4人を迎えての、ブラームスのクラリネット五重奏曲で締め括る。クラリネットの名曲が一夜にして俯瞰できるのみならず、35年の熟成を経て、なお進化し続ける名手の“いま”を体感できる、貴重な機会となろう。 そうしてもう一つの聴き所は、庄司紗矢香の弾くドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲だろう。庄司の伸びやかで艶のある音色は、この作品にぴったりのはず。1歳上の指揮者との俊英コンビがどんな音楽を聴かせるか、楽しみだ。庄司紗矢香 ©Kishin Shinoyamaクシシュトフ・ウルバンスキ ©Fred Jonny

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