eぶらあぼ 2014.10月号
71/257
68ファジル・サイ(ピアノ・作曲)&須川展也(サクソフォン)“類を見ない新しい芸術作品”の誕生文:オヤマダアツシペトル・ヴロンスキー(指揮) 読売日本交響楽団今や稀なる重厚・壮大なマーラー文:柴田克彦10/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp10/17(金)19:00 いずみホール問 いずみホールチケットセンター06-6944-1188 http://www.izumihall.co.jp第575回 サントリーホール名曲シリーズ10/17(金)19:00 サントリーホール第170回 東京芸術劇場マチネーシリーズ10/19(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp この共演には未知の時間と新しい可能性、そして何より音楽が生まれる時間を共有する興奮が渦巻いている。これまでもさまざまな驚きとワクワク感を与えてくれた2人の音楽家、ピアノ&作曲のファジル・サイと、サックスという楽器に革命の時代をもたらした須川展也が、研ぎ澄まされた才能をぶつけ合うのである。 興奮が頂点に達するのはコンサートのフィナーレ、須川がサイに委嘱をした新作の世界初演だろう。クラシックを土台としながらも数多くの新作を委嘱・初演し、ジャズやワールド・ミュージックのテイストもものにしている須川。その彼を想定し、サイが多彩なプレイ・スタイルと音楽性を反映させた作品を書くことも大いに期待できるだろう。須川自身も「類を見ない新しい芸術作品の予感」とコメントしており、記念すべきデビュー30周年を迎えている今年のクライマックスとなるはずだ。サイ マーラーは、15歳までチェコの町イフラヴァで暮らした。それゆえ同国の指揮者には、シンパシーに満ちた演奏史がある。ペトル・ヴロンスキーも、クーベリック、ノイマン、マーツァルといった系譜に属するマエストロだ。2011年特有のオリエンタリズムにあふれた曲なのか、それとも……。“その時”はもうまもなく訪れる。 コンサートではほかにも、サイのピアノによる即興精神にあふれたモーツァルトのピアノ・ソナタ(第14および15[18]番)、そしてフランクのサック5月(大震災の直後!)、ヴロンスキーはマーツァルの代役で読響に登場し、交響曲第5番を指揮。細部まで血を通わせた壮大かつ壮絶な名演で皆を驚嘆させ、“次のマーラー”への期待を強く抱かせた。この10月、それが実現する。 1946年プラハ生まれのヴロンスキーは、ブルノ国立フィル、ヤナーチェク・フィル等の首席指揮者を歴任したほか、チェコ・フィル、ドレスデン・フィル、サンクトペテルブルク・フィル等に客演し、プラハ国立歌劇場はじめオペラでも活躍している名匠。今回は、マーラーやドヴォルザークで喝采を浴びて以来、3年半ぶりの読響共演となる。 メインは交響曲第1番「巨人」。少年時代にチェコで触れた自然、民謡、軍楽ス・ソナタ(言うまでもなくヴァイオリン・ソナタの編曲)、ミヨーの「スカラムーシュ」が並ぶ。バラエティ豊かなプログラムにおける新作初演とあって、サックスの歴史とレパートリーを変える大事件になるかもしれない。会場の聴衆は、その立会人なのだ。隊の体験や、愛、悲しみ、情熱、絶望など、青年マーラーの多様な思いが投影された作品だけに、とりわけ全ての音に意味をこめるヴロンスキーには打ってつけの1曲だろう。彼は、同曲をイフラヴァのマーラー音楽祭で指揮した実績もあるし、壮麗でスケールの大きな読響のサウンドも強い味方となる。前半がスーク若き日の佳品である弦楽セレナードなのも嬉しい。これは義父ドヴォルザークの同名曲を思わせる温かく抒情的な音楽。ここは本場の名指揮&一流オーケストラの弦楽演奏で耳にする稀少な機会だ。 前回感激した人は再度、逃した人は今度こそ、ヴロンスキーの濃密な世界を体験したい。須川展也 ©Masanori Doiファジル・サイ ©Marco Borggreveペトル・ヴロンスキー ©読売日本交響楽団
元のページ