eぶらあぼ 2014.10月号
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56東芝グランドコンサート 2015 トゥガン・ソヒエフ(指揮) トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団色鮮やかでポジティブな、万人必聴の名コンビ文:柴田克彦アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団渾身のオーケストラ音楽がここにある文:柴田克彦ラザレフが刻むロシアの魂 SeasonⅢ 第664回 東京定期演奏会10/24(金)19:00、10/25(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp ラザレフ&日本フィルの充実ぶりは、何度でも強調せずにおれない。2008年の首席指揮者就任以来のプロコフィエフ、ラフマニノフ、スクリャービン各シリーズを通して、日本フィルのホットな持ち味にスケール感と緻密さが加わり、今や“ライヴに足を運びたい”筆頭格にまで上昇した。それを象徴する例が今年3月のショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。壮絶な熱演と重層感のあるサウンドが、グレードアップを強烈に印象付けた。 今秋始まる『ラザレフが刻むロシアの魂 SeasonⅢ』のテーマが、まさにそのショスタコーヴィチ。しかも選ばれた交響曲は、4番・11番・8番だ。ラザレフによれば「15曲の中でもっともボリュームのある、内容の濃い作品」で、「マーラーとの密な繋がり」を意識した選曲。この審美眼は実に興味深い。 10月に演奏するのは第4番。作曲者が当局の弾圧を怖れて取り下げた問題作であり、マーラー色の濃い西欧モダン的音楽にして、複雑な構造と緊密な内容をもつ快作だ。「エネルギーが凝縮され、第5番以降、最後の交響曲第15番に至るまでの要素が全て盛り込まれた作品」と語るラザレフの、曲の本質を抉るアプローチへの期待は大きい。そして第7番同様の大規模作品ゆえに日本フィル渾身の名演を強く予感させる。 前半がチャイコフスキーの弦楽セレナードというのも面白い。抒情的な19世紀ロマンとシリアスなショスタコとの対照も妙味だし、ラザレフならば既成概念を超えたセレナード演奏を聴かせてくれそうだ。 あらゆる意味でエキサイティングな当公演、もちろん足を運ばずにはおれない。2015/2/20(金)ザ・シンフォニーホール、2/21(土)サントリーホール2/22(日)上野学園ホール(広島)、2/23(月)福岡シンフォニーホール2/25(水)石川県立音楽堂、2/28(土)愛知県芸術劇場コンサートホール3/1(日)東京エレクトロンホール宮城、3/2(月)ミューザ川崎シンフォニーホール問 クラシック事務局0570-012-666 http://www.t-gc.jp※公演によりプログラムは異なります。詳しくは上記ウェブサイトでご確認ください。 いまフランスのオーケストラが面白い。パリ管はじめ近年来日した団体をみても、これまでになく自発的な演奏を聴かせている。その筆頭がトゥガン・ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル国立管だ。彼らは、国内屈指の伝統を誇る『東芝グランドコンサート』の出演者として、来年2月にコンビ3度目の来日を果たす。 同楽団は19世紀の初めに創設された名門。35年にわたるプラッソン時代に大躍進し、2008年からロシア出身のソヒエフを音楽監督に迎えている。彼はまだ30代ながら、ベルリン・ドイツ響とボリショイ劇場の音楽監督も兼務し、ベルリン・フィル&ウィーン・フィルなどの一流オーケストラに次々と客演するなど破格の勢いだ。 彼らの12年の来日公演は圧巻だった。めくるめくドラマ性と豊麗な音で酔わせた「幻想交響曲」に「シェエラザード」…。特に、驚くほどカラフルな色彩感と生命力に溢れた後者は、今までに聴いた同曲のベストかもしれない。 さらに熟したコンビが贈る今回のプログラムは、まず「牧神の午後への前奏曲」、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番、「展覧会の絵」。前半でフランスの香りと同国ヴァイオリン界の旗手・ルノー・カプソンの艶やかなソロを堪能させ、09年来日公演やCDに快演を印す「展覧会の絵」で華麗な妙技を誇示する。もう1つのプログラムは、ショパンのピアノ協奏曲第1番と「シェエラザード」。10年ショパン・コンクールの覇者、ユリアンナ・アヴデーエワの雄弁なソロで魅了し、後はもう前記の通り。これはぜひ耳にして欲しい。 濃密で輝かしい唯一無二のオーケストラ音楽を奏でる当コンビ、絶対のお薦めだ。ユリアンナ・アヴデーエワ ©Harald Homannルノー・カプソン ©Paolo Roversiトゥガン・ソヒエフ ©Marco Borggreveアレクサンドル・ラザレフ ©山口 敦

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