eぶらあぼ 2014.10月号
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51沼尻竜典オペラセレクション ヴェルディ《リゴレット》実力派が結集したすこぶる意欲的な公演文:宮本 明ミステリアスな輝きを放つ美音文:高坂はる香ダニール・トリフォノフ(ピアノ) 10/11(土)14:00、10/12(日)14:00 びわ湖ホール問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 http://www.biwako-hall.or.jp10/13(月・祝)14:00 横浜みなとみらいホール10/21(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 10/8(水)岡山シンフォニーホール、10/9(木)神戸文化ホール、10/10(金)前橋市民文化会館、10/12(日)武蔵野市民文化会館、10/19(日)青葉の森公園芸術文化ホールワレリー・ゲルギエフ(指揮)マリインスキー歌劇場管弦楽団との共演10/16(木)愛知県芸術劇場コンサートホール10/18(土)所沢市民文化センターミューズ問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 びわ湖ホール芸術監督・沼尻竜典によるオペラセレクション第8弾は、ヴェルディ中期の名作《リゴレット》。ダブル・キャストのそれぞれに、実力本位のキャスティングを感じさせる納得の顔ぶれが揃った。これは2公演とも観てみたい! リゴレットを演じるのは堀内康雄と牧野正人という日本が誇る2人のプリモ・バリトン。主人公の醜さの裡に秘めたほとばしる父性愛の激しさを聴かせてくれよう。ジルダには、役そのままに清らかな声と容姿の幸田浩子、そして数年前の《魔笛》でのMETデビューも大きな話題となった森谷真理。森谷 2011年チャイコフスキー・コンクールで頂点に輝いたトリフォノフは、その優勝を契機に見事な飛翔を遂げた。今や世界で多忙な演奏活動を行う。ミステリアスな輝きを持つ美音、自然発生的に湧き出す音楽。聴衆は頭で考えることを忘れ、ひたすら音楽に身を任せる楽しみを味わうことになる。強い引力を持つピアニストだ。 そんな彼が、チャレンジングなプログラムとともに来日する。曲目は、バッハ=リスト「幻想曲とフーガ ト短調」、ベートーヴェンのソナタ第32番、リストの「超絶技巧練習曲」全曲ほか。 今年、自作のピアノ協奏曲初演を経験している彼にとって、作曲家でありスターピアニストでもあったリストへの共感は特別なはずだ。ピアノ技巧の限界に挑む「超絶技巧練習曲」をどう弾き上げるだろうか。また、ベートーヴェン最後のソナタにいかに対峙するのかも聴きどころ。中身の濃いプログラムで、奏者だけでなく、聴く側にも多は海外を本拠にしているので今、日本で彼女を聴けるのは貴重だ。にっくき色男マントヴァ公爵には、福井敬とジョン・健・ヌッツォのエース・テノールが配され、輝かしい美声で気品あるナンパ師を演じる。他にも若手・中堅の実力者たちがずらりと並ぶ陣容からは、この作品の決定版を、という上演側の意気込みが伝わってこようというもの。 演出は、演劇やミュージカルにも広く活躍の場を広げている田尾下哲。くのエネルギーが求められそう。 演奏に没頭することと冷静でいることのバランスの難しさについて尋ねたとき、トリフォノフはこう答えた。「演奏中に自分を忘れてしまうのは素晴らしいことだと思う。精神的な制約をなくし、音楽の中に示唆されるものを聴くためには、作品に没頭しなくてはならない。ただ、耳は常に開かれている必要があり、それを保つことは簡単ではない」 自由で新鮮な彼の音楽は、こうして作られている。今回は、ピアノ作品と奇をてらわない正攻法が特徴のミヒャエル・ハンペのもとで学んだ彼もまた、師同様に安易な読み替えをよしとしないクリエイターだ。8月に行なわれた関連企画「プレトーク・マチネ」でも、沼尻とともに、ユゴーの原作やその背景となっている時代について徹底的に語ったというから、原作を読み込んだわかりやすい舞台の中に、しかし奥深く救いのないこの人間ドラマを展開してくれるはず。してある種の高みを極めた楽曲たちを通して、彼の特別な精神世界を覗くことになりそうだ。左から:沼尻竜典 ©RYOICHI ARATANI/堀内康雄 ©相澤隆/牧野正人/幸田浩子/森谷真理/福井 敬/ジョン・健・ヌッツォ©Dario Acosta/DG

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