eぶらあぼ 2014.10月号
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212SACDCDCDCDショスタコーヴィチ:交響曲第5番/スクロヴァチェフスキ&読響ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第8番&第9番/パノハ弦楽四重奏団唱歌~日本の子供の歌/ダムラウ&ナガノ&モントリオール響ラプソディ・イン・ブルー~名曲全集Ⅲ/佐山雅弘&東響ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ベルリオーズ:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」より愛の情景スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)読売日本交響楽団ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第8番・第9番パノハ弦楽四重奏団七つの子、早春賦、夕焼け小焼け、隅田川、赤とんぼ、赤い靴、「ちんちん千鳥」による管弦楽幻想曲、さくら 他(全てジャン=パスカル・バンテュス編曲)ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)ケント・ナガノ(指揮)モントリオール交響楽団モントリオール児童合唱団ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー、パリのアメリカ人、子守歌、「アイ・ガット・リズム」変奏曲/ホワイト:5つの小品佐山雅弘(ピアノ)竹本泰蔵(指揮)高関健(指揮)東京交響楽団収録:2013年10月、横浜みなとみらいホール(ライヴ)日本コロムビアCOGQ-70 ¥2800+税カメラータ・トウキョウCMCD-28311 ¥2800+税ANALEKTA AN-29131 輸入盤/¥オープンキングレコードKICC-1146 ¥3000+税スクロヴァチェフスキが最新盤でも現役最長老組にふさわしい堂々とした快演を聴かせている。この貫禄っぷり、もはや“怪演”とでも表現したほうがいいのかもしれない。元来が硬質の音楽作りを得意とするスクロヴァだが、弦を主体とした引き締まった造形に加え、ここではテンポも抑制気味にして肝の据わった足取りで聴き手を圧倒する。終楽章では意表を突くアゴーギグ、表現のデフォルメ、テンポの変更など大技を次々に繰り出し、効果的に炸裂させてはぐいぐいと押しているのにはまったく驚かされた。90歳を超えた体のどこから、こうしたアグレッシブなリードが出てくるのだろうか。(江藤光紀)ほんの1メートルほどの距離で、パノハ弦楽四重奏団の演奏を聴いた経験がある。音楽や呼吸がぴたりと合っているだけでなく、スコアの感じ取り方や歌心まで共有。4人の心臓の鼓動までもが一致しているのでは、とすら思った。そんな超人集団による、ドヴォルザーク後半の弦楽四重奏曲(第8〜14番)の録音が、十余年を費やし、今回で完結。彼らならば、たとえ一気に録っても、高い質は保つだろう。しかし、あえてじっくり時間をかけたからこそ、彼らが持つ独特の滋味がいっそう醸成され、つぶさに掬い取ることができた。特に、当盤の地味な作品の組み合わせでこそ、それをより実感できよう。(寺西 肇)ケント・ナガノが、妻であるピアニスト児玉麻里が愛娘のために歌うのを聞いたのがきっかけという、日本語による日本の子どもの歌。ダムラウの日本語に、概ね違和感はない。むしろ、言葉に過度に依存しないぶん、これらの素朴な旋律をありのままの形で素直に手渡してくれる。とはいえ、もちろん歌詞の意味は十分理解しているようで、歌のこまかな表情はどれも曲にふさわしい。日系とはいえ19世紀末からすでに3世代アメリカ人という家系のナガノにとって、音楽的には直接の郷愁はないはずで、編曲含め管弦楽伴奏はときに意表をつく装いを見せるが、それも新鮮だ。(宮本 明)佐山雅弘と東響によるガーシュイン集。最大の焦点はジャズ畑の佐山が「ラプソディ・イン・ブルー」をどう料理するかだが、意外にもほぼスコア通り。なるほどこれが、クラシックにも造詣の深い彼ゆえの、作曲者に対するリスペクトの表明なのだろう。ただおもしろいのは、たとえ楽譜通り弾いていてもジャズ特有の“コブシ”みたいなものがにじみ出てきて、その結果音楽にクラシックのピアニストが弾くのとは違うコクがもたらされる点。それこそが佐山がこの曲を弾く意味なのだろう。これを聴けば、天国にいるガーシュインも小躍りするに違いない。(藤本史昭)
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