eぶらあぼ 2014.9月号
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59日本フィル杉並公会堂シリーズ 山田和樹 コンチェルトシリーズ Vol.3協奏曲の醍醐味と児童合唱の愉しさを文:オヤマダアツシ飯森範親(指揮) 東京交響楽団サイが巻き起こす“トルコの風”文:飯尾洋一9/21(日)15:00 杉並公会堂問 杉並公会堂03-5347-4450 http://www.suginamikoukaidou.com第82回 東京オペラシティシリーズ10/11(土)14:00 東京オペラシティコンサートホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 山田和樹の肝いりプログラムで注目を集めている日本フィルの『コンチェルトシリーズ』も3回目。今回は2人の若手ソリストをゲストに迎えた協奏曲を2曲、そして合唱指揮に長けた山田ならではの楽しい作品が取り上げられる。 19歳の山根一仁を迎えるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ロシア=旧ソヴィエト系の作品に深く共感している彼が、自由で豊かな感情にあふれた演奏を披露してくれるはず。マリンバの俊英として名前が知られている出田りあは、なんと新作の世界初演。イスラエルの作曲家オハド・ベン=アリのマリンバ協奏曲は彼女が委嘱したものだが、5楽章形式の親しみやすい作風をもった作品とのこと。すでに評価を得ているチャイコフスキーの新鮮な演奏も、そして新しい作品が送り出される瞬間も味わえるとあって、このコンサートに対する期待度も上がるはずだ。 さらには、作曲家としての再評価が 新音楽監督ジョナサン・ノットをはじめ、正指揮者に名を連ねる飯森範親ら、充実の指揮者陣を誇る東京交響楽団。10月の東京オペラシティシリーズでは、トルコの鬼才ファジル・サイを迎え、飯森の指揮で意欲的なプログラムを披露する。 『トルコの風』と題されたこの日のプログラムは、新旧トルコ尽くしといったところ。トルコ趣味全開の軽快な作品、モーツァルトの《後宮からの逃走》序曲で幕を開け、ファジル・サイの独奏で同じくモーツァルトのピアノ協奏曲第21番が演奏される。そして、注目のメイン・プログラムはファジル・サイ作曲の交響曲第1番「イスタンブール・シンフォニー」。ピアニストとしてのファジル・サイと、作曲家としてのファジル・サイの両方を聴くことができる。 「イスタンブール・シンフォニー」では、オーケストラにトルコの民族楽器が加わるという、東西文化の交叉点イ期待される山本直純の組曲「えんそく」も。児童合唱が遠足の楽しさを歌うこの曲は、「サッちゃん」「ねこふんじゃった」などでも知られる阪田寛夫の詩に付曲。「歩く時のうた」「おべんとう」「山の上の合唱」など、タイトルだけでも楽しそうな全6曲で、「城跡」スタンブールを題材にした本作ならではの編成が採用されている。ブルジュ・カラダーのネイ(葦を素材とした笛)、ハーカン・ギュンギョルのカーヌーン(撥弦楽器)、アイクト・キョセレルリの打楽器といった3人の奏者が共演しはNHKの『みんなのうた』でも放送された人気曲だ。聴きながら、聴衆も遠足に同行している気分を味わえるだろう。今回は杉並児童合唱団が歌うのも魅力。1964年の作品であるため今年は誕生50周年、という粋な選曲なのである。て、独特のサウンドを作り出す。作風は明快で、エキゾチックかつパワフル。7つの楽章がさまざまなイスタンブールの情景を描く。 秋に吹く“トルコの風”は思いのほか熱い風になりそうだ。出田りあ ©R.Aratani山根一仁 ©K.Miura山田和樹 ©山口 敦ファジル・サイ ©Marco Borggreve飯森範親 ©大野純一
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