eぶらあぼ 2014.9月号
56/207
53外山雄三(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団ここに歴史とドラマあり文:柴田克彦吉田裕ひろふみ史(指揮) ボローニャ歌劇場フィルハーモニープッチーニの名作で凱旋公演文:宮本 明第852回オーチャード定期演奏会9/23(火・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp9/24(水)19:00 Bunkamuraオーチャードホール問 しゅくみねっと03-5468-5517 http://sawakami-opera.com デビュー58周年と55周年、しかも共に今なお最前線にいる…。この凄い2人が集うのが、9月の東京フィル定期だ。かたや1931年生まれの外山雄三。56年のデビュー以来、N響の正指揮者や、大阪、京都、名古屋、神奈川、仙台などのオーケストラの要職を歴任してきた指揮界の最重鎮にして、“日本クラシック”屈指のヒット曲「管弦楽のためのラプソディー」等で知られた大作曲家でもある。かたや今年デビュー55周年を迎えた中村紘子。“天才少女”として世界に名を馳せ、3700回を超える演奏会や50点近い録音を通じて聴衆を魅了してきた、邦人ピアニストの代名詞的存在だ。プログラムは、チャイコフスキーの幻想的序曲「ロメオとジュリエット」と交響曲第4番に、リストのピアノ協奏曲第1番を挟んだ、ダイナミックかつ濃密な名作集である。 実はこの2人、1960年のN響世界一周演奏旅行で共演している。あれから50余年にわたり日本音楽界を牽引して 今年2月にボローニャ歌劇場フィルハーモニーの芸術監督就任が発表された指揮者・吉田裕史が同オーケストラを率いて凱旋公演を行なう。 吉田は1968年生まれ。東京音大を卒業後、渡欧してミュンヘンなどで研鑽を積み、2006年からはイタリアを中心に活動している。 ボローニャ歌劇場フィルハーモニーは、250年の歴史を誇るボローニャ歌劇場管弦楽団の主要メンバーによって08年に結成された、組織としては新しいオーケストラ。テアトロ・コムナーレにほど近いテアトロ・マンゾーニを会場に、オペラ公演の合間を縫うように、シーズン中の月に1度程度のペースでオーケストラ・コンサートを開催している。 もし吉田のポストが、ダニエレ・ガッティ以来空席になっているボローニャ歌劇場の音楽監督につながる可能性があるとするなら、さらに楽しみだ。吉田は昨年も来日して、京都・清水寺でオきた両者が、創立100周年記念ワールドツアーを成功裡に終えて間もない日本最古のオーケストラである東京フィルの公演で顔を合わせるのも、何かの縁だろうか。もちろん2人は今も、エネルギッシュでクリエイティブな第一線の音楽家。気迫漲るタッチ、芳醇なピアニズムで魅せる中村に相応しいリストの協ペラを上演し話題となったが、今年も二条城で《蝶々夫人》を上演したあと、Bunkamuraオーチャードホールで東京公演を行なう。こちらは演奏会形式による《蝶々夫人》ハイライトとプッチーニのオペラ名曲集。アンナリーザ・ラ奏曲、作曲家ならではの緻密で深い解釈を聴かせる外山のチャイコフスキー共に、生気や熱気をも湛えた熟達の至芸が期待される。 これは、半世紀を超えたキャリアを映す“音のドラマ”であり、我々が外山&中村&東京フィルの歴史を再認識する貴重な機会だ。スパリョージ(ソプラノ)、アントネッラ・コライアンニ(メゾソプラノ)、ジョルジオ・ベッルージ(テノール)、ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ(バリトン)と、中堅・若手の4人の実力派歌手が出演する。新たなコンビの船出を見守りたい。中村紘子 ©Hiroshi Takaoka外山雄三 ©S.Yamamoto吉田裕史
元のページ