eぶらあぼ 2014.9月号
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37ワレリー・ゲルギエフ(指揮) マリインスキー歌劇場管弦楽団名匠たちによる予測不能なバトル!?文:江藤光紀山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団後期ロマン派の多面性をたっぷりと文:江藤光紀10/14(火)19:00、10/15(水)19:00 サントリーホール問 ジャパンアーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 10/9(木)熊本県立劇場コンサートホール、10/10(金)福岡シンフォニーホール、10/11(土)ザ・シンフォニーホール、10/12(日)石川県立音楽堂コンサートホール、10/16(木)愛知県芸術劇場コンサートホール、10/17(金)NHKホール、10/18(土)所沢市民文化センターミューズアークホール全国公演の詳細は(http://www.japanarts.co.jp)でご確認ください。第663回 東京定期演奏会9/12(金)19:00、9/13(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 今秋、2年ぶりに来日するゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管。昨年、あのパンチの効いたエネルギッシュな舞台に接することがかなわなかったので、リスナーの“欲求不満”も溜まっているはずだ。実は筆者も、彼らの逞しい生命力に心洗われたい一人なのだ。 秋の来日で用意された2つのプログラムは、そんなファンの渇望を癒すに十分なものだ。サントリーホールでの2公演のうち、まず10月14日には前半にネルソン・フレイレをソリストに迎えてブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」。フレイレといえば同じ南米出身のアルゲリッチとの当意即妙のデュオでも有名だが、本来は硬質なタッチ、スケールの大きな演奏で魅せてくれるピアニスト。シャイー&ゲヴァントハウス管と録音したブラームスの協奏曲集は発表当時主要なレコード賞を総ナメにした名演だが、今回はゲヴァントハウスに劣らず音が大きく重いマリインスキー管が相手だ。強烈なぶつかり合いが繰り広げら 山田和樹が若手指揮者陣のトップを快走している。スイス・ロマンド管を率いての来日公演は大成功。演奏だけではなく、独自の選曲の評価も高かった。来シーズンにはモンテカルロ・フィルへの首席客演指揮者就任、パリ管との「火刑台上のジャンヌ・ダルク」などに加え、日本フィルとのマーラー・ツィクルスもスタート。先日、同団正指揮者任期延長の発表もあったばかりだ。 選曲の独自性や楽曲の聴きどころを的確に見抜き自分色に染め上げる力など、山田の美質にはいろいろあるが、正直に言ってここまでの進撃ぶりは、筆者も予想はしていなかった。山田には音楽のフレッシュさだけでなく、ステージの和をも作り出す不思議なオーラがあるから、観客も知らず知らずに魅了されてしまうのだろう。勢いに加え、ステージを重ねることで変わっていく余地を残しているところも期待大。 そんな魅力満載の“ヤマカズ”に、直れるのではないか。 後半はゲルギエフが得意とするショスタコーヴィチの交響曲から第8番。全5楽章からなる骨太の構成と重苦しい曲想は、第二次大戦下という作曲当時の時世を反映している。そんな時代にタイムスリップするかのように、ゲルギエフはホールを緊張感の張りつめた空間へと塗り替えることだろう。 翌15日は“伝家の宝刀”ともいうべきストラヴィンスキー3大バレエの一挙近で触れる機会が日本フィルの9月定期。今年はR.シュトラウス生誕150年ということで、「ばらの騎士」ワルツ第1番と「ドン・キホーテ」が組まれおり、後者にはベルリン放送響首席ヴィオラのパウリーネ・ザクセが日本フィル・ソロ・チェロの菊地知也と共演する。 もう1曲、シェーンベルクの「浄められた夜」は月下に背徳と愛を濃密に語らう男女の話。饒舌に、時にはユーモアを交えて物語るR.シュトラウスに対し、内容も作風も対照的だが、文学と深く結びついた後期ロマン派の多面性をたっぷりと味わってもらおうという心憎い趣向だ。上演が控える。「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」すべて原典版というメインディッシュ3品のような凄いコースができるのも、たぶん彼らだけだ。ネルソン・フレイレワレリー・ゲルギエフ山田和樹 ©山口 敦
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