eぶらあぼ 2014.9月号
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250BATIK『落ち合っている』貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル26デュエットで描く黒田育世の新たな世界意欲的な見ごたえあるプログラム文:小野寺悦子文:渡辺真弓Dramatic・super・dance・theater『サロメ』強さ・儚さ・妖艶さを合わせ持つダンスアクター、東山義久文:長谷川あや 黒田育世率いるダンスカンパニー・BATIKが、この秋東京芸術劇場を舞台に最新作『落ち合っている』を発表する。BATIKとしては2012年に上演し好評を博した『おたる鳥をよぶ準備』以来約2年ぶりの新作であり、ファン待望のステージとなりそうだ。 構成・演出・振付は黒田育世。BATIKといえば女性のみのダンサー集団として知られるが、今回は黒田×BATIKダンサーのデュエットという新たな試みに挑む。黒田と対峙するダンサーは、連日BATIKのメンバーが日替わり 神戸の貞松・浜田バレエ団が、特別公演として創作リサイタル26を開催すで出演。黒田は劇中劇として『春の祭典』を踊り、ダンサーと一対一で濃密な世界をつくりあげてゆく。生々しく残酷なまでの”女性性”をもって、容赦なく暗部を抉り、心象風景を赤裸々に描き出す黒田の作品世界。集団から個と個へ凝縮を遂げたとき、そこに立ちあらわれるものとは…。共鳴、反発、融合、もしくはさらなる個か。黒田が突きつける深淵の行方に期待が高まる。る。プログラムが意欲的である。まず日本のバレエ団として初めてキリアン代表作の一つ『小さな死』を上演するのが話題。音楽にはモーツァルトが使われ、キリアン独特のミステリアスな世界を体験することができるだろう。そのほか、主宰の貞松正一郎をはじめ、内外で活躍する注目の振付家たちの新作初演が4曲。三浦宏之振付『Re-self』(音楽ショパン、パン・ソニック)、中村恩恵振付『TWO』(音楽ベートーヴェン)、藤井泉振付『Fashion Nightmare』(音楽ダヴィ・ベルジェ)、貞松正一郎振付『ピアノ・ブギ・ウギ』(音楽レ・フレール)。音楽の選曲を見てもエキサイティングな作品が生まれそうな予感。貞松・浜田バレエ団は、古典バレエのみならずコンテンポラリー作品にも積極的に取り組んできた歴史があるだけに、期待に違わぬステージを披露してくれることだろう。9/4(木)~9/7(日) 東京芸術劇場 シアターイースト問 ハイウッド03-3320-7217 http://www.geigeki.jp9/13(土)18:30 神戸文化ホール(中) 問 貞松・浜田バレエ団078-861-2609 http://www.sadamatsu-hamada.com9/5(金)~9/7(日) シアター1010 問 キョードー東京0570-550-799 http://www.t1010.jp 演劇や絵画、リヒャルト・シュトラウスのオペラなどで著名なオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』が、ダンスアクター・東山義久、舞踊家・舘形比呂一、演出 振付・上田遥という異色のタッグによって舞踊化される。新約聖書に登場するエロディアの娘(サロメ)を題材にした同作のタイトルロールに男性の東山を起用したことについて上田は、「サロメは性を超越した存在。魂・精神・肉体を投げ打って演じる作品だと思いますが、舞踊化するにあたり、魂・精神・肉体と美しさを兼ね添えたキャストが必要だった」とコメント。自分の踊りの褒美として、ヨカナーンの首を所望するサロメについては、「死に対する恐怖もない。それにはすさまじいものがある。そういうピュアさを出したい」と語る。音楽にはヴァイオリニストの川井郁子の楽曲を使用。既存の楽曲に加えてドラムの生演奏が入り、本作のためのオリジナル曲も盛り込まれる。新たな命を吹き込まれる、舞踊『サロメ』に期待したい。東山義久『小さな死』 ©Daisy Komen
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