eぶらあぼ 2014.9月号
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248公演レポートボリショイ・バレエ『ラ・バヤデール』昭和音楽大学短期大学部 バレエ特別公演〈未来へつなぐ ―日本の「静」「動」「美」〉グリゴローヴィチ再改定の自信作若い才能とプロたちの競演文:小田島久恵文:高橋彩子 今年の5月にモスクワのボリショイ劇場で行われた『ラ・バヤデール』を鑑賞した。2013年にプレミアが行われたグリゴローヴィチによる再改定版は、マイム部分が削られ、舞踊場面を増やした画期的なバージョン。 5月8日にニキヤを踊ったのはアンナ・ニクーリナ。ドラマティックな表現力で芯の強いヒロインを演じ、ガムザッ 毎年バレエ界に優秀な人材を送り出している、昭和音楽大学短期大学部バレエコース。バレエの実技のほか、バレエ史や解剖学ほかの座学や音楽などを学ぶことができる。このバレエコースの特別公演として、豪華な振付家・出演者と在学生によるトリプルビルが行われる。テーマは〈未来へつなぐ ̶日本の「静」「動」「美」〉。日本の振付家による多彩な演目が揃う。 まず『Will will』は、元Noismメンバーの山田勇気と高原伸子が振り付けた作品。好評を博した昨年に続いての上演となる。若さと希望あふれる短大2年生ならではの踊りを堪能することができるだろう。また、『トキ』は、能楽師の津村禮次郎が佐渡のトキの再生を願って2006年に発表した創作を、ネザーティに刃を向けるシーンでは強烈な印象を残すなど、可憐で線の細いプリマの印象が強かったニクーリナが、新たな境地に達していることを思わせた。ミハイル・ロブーヒンのソロルは男性的で、包容力が感じられるサポート。 続く5月9日は、若手オリガ・スミルノワのニキヤにセミョーン・チュージンのソロル。昨年この『ラ・バヤデール』でブノワ賞を受賞しているだけあってスミルノワの踊りは正確でポジションも美しく妖艶そのもの。冒頭の一幕こそ少し硬さが目立ったが、次第に調子を上げ、ラスト近くで見せる超絶技巧のピルエットの連続に会場は大いに沸いた。チュージンは大柄な身体をうまく使って、優雅で気品あるソロルを演じた。奴隷たちによるインディアン風の群舞、ブロンズ・アイドルの跳躍も勇壮さに溢れ、ボリショイ自信のプロダクションであることが伝わってくる。コール・ドの技術の高さもボリショイの誇りを感じさせる圧巻の舞台だった。 彼らが出演する11月からの来日公演を楽しみにしたい。ランド・ダンス・シアターで活躍し、現在フリーの小㞍健太がダンス化したもの。11年のスタジオアーキタンツ10周年記念公演で上演された。繊細さとダイナミズムが共存する作品で、津村とバレリーナ酒井はなとの異色デュエットも必見。そして『Degi Meta go-go』はスターダンサーズ・バレエ団バレエ・マスターの鈴木稔が97年に発表した『KATSUONISILAGA』を発展させ、10/19(日)14:00 昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ問 昭和音楽大学チケットセンター044-953-9899 http://www.tosei-showa-music.ac.jpアンナ・ニクーリナ ©Damir Yusupovオリガ・スミルノワ ©Damir Yusupov『白鳥の湖』11/26(水)13:00/19:00 Bunkamuraオーチャードホール ※11/20(木)、24(月・休)公演は完売『ラ・バヤデール』12/3(水)18:30、12/4(木)12:00/18:30 東京文化会館『ドン・キホーテ』12/6(土)12:30/18:30、12/7(日)14:00 東京文化会館問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/bolshoi2014折に触れて上演してきた作品。スピーディーでパワフルな動きが特徴だ。林ゆりえや吉瀬智弘をはじめとするスターダンサーズ・バレエ団とともに、卒業生がどう踊りこなすか、注目したい。 踊りを学び、成長期にある若者達が、豊かな才能と経験を持つプロと一緒に舞台を作ることの意義は大きい。彼らの飛躍の瞬間を、私達は見届けることになるかもしれない。津村禮次郎酒井はな林ゆりえ吉瀬智弘
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