eぶらあぼ 2014.9月号
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247東京バレエ団『ドン・キホーテ』マシュー・ボーンの『白鳥の湖』ボリショイ・バレエ&東京バレエ団のWキャストで魅せるマルセロ・ゴメス出演の特別企画文:石村紀子文:新藤弘子 スペイン、バルセロナの街で繰り広げられる陽気で明るい恋愛活劇。東京バレエ団の『ドン・キホーテ』は伝説の名バレエダンサー、ウラジーミル・ワシーリエフの演出・振付による版だが、今回はワシーリエフ本人が監修・指導に全面的に加わる。さらに同団で長年プリマとして活躍、『ドン・キ』初演時にも主役を務めた斎藤友佳理が後進の指導に当たるという万全の体制なので期待は高まる。キトリはアナスタシア・スタシュケヴィチと上野水香のダブルキャスト。スタシュケヴィチはボリショイ・バレエのソリストで 1995年にロンドンで初演されるや、チケットは完売につぐ完売。バレエ作品としては異例のブロードウェイ進出、多くの国際的な賞の獲得など、舞踊界に一大センセーションを巻き起こした“男性版”『白鳥の湖』が、この秋ふたたび日本に飛来する。本公演は、アメリカン・バレエ・シアターのマルセロ・ゴメスが出演するスペシャル版。 物語は、バレエの代名詞ともいうべき『白鳥の湖』をもとにしている。愛に満たされず育った王子が、水辺で一羽の白鳥(ザ・スワン)に出会う。ただし、この白鳥は古典とは違い、猛々しく力強い雄のスワン。孤独な王子は彼の瞳今年3月にキトリに選ばれて成功を収めており、ワシーリエフの信頼も厚い期待の若手だ。上野はおきゃんな雰囲気がキトリにぴったり。バジル役はアメリカン・バレエ・シアターとボリショイ・バレエのプリンシパルとして活躍するデヴィッド・ホールバーグと、最近次々と主役に抜擢されて躍進著しい柄本弾が競う。パワー溢れるエネルギッシュな舞台を楽しみたい。に通じ合うものを認めて歓喜するが、この白鳥と瓜二つの男(ザ・ストレンジャー)が舞踏会に現れる。男は、王子をあざ笑うかのように女性たちと踊り、果ては王子が屈折した愛情を抱いている母の女王までも、その魅力の虜にしてしまう…。 演出・振付のマシュー・ボーンは、物語を20世紀の英国王室を思わせる設定に再構築。着替えから公式行事まで常に人目にさらされる王子の日常や、そこから抜け出して訪れるクラブでの9/19(金)~9/21(日) ゆうぽうとホール 問 NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp9/6(土)~9/21(日) 東急シアターオーブ 問 キョードー東京 0570-550-799 http://theatre-orb.com/lineup/14_swanlake乱痴気騒ぎが、馬鹿馬鹿しくもいきいきと描かれる。けれども、作品を成功に導いた最大の要因は、こうした斬新な設定のもと、王子とスワンの関係を深く豊かに描ききったことにある。音楽との対峙の仕方も透逸だ。 ワイルドな白鳥の群舞や舞踏会の踊りも見ものだが、王子の寝室を埋め尽くす白鳥の群れとスワンが死闘を繰り広げる終幕には、心が震えるほどの衝撃と感動を覚えること必至。4年ぶりの日本公演、これを見逃す手はない。マルセロ・ゴメス ©Jade Young©Helen Maybanksアナスタシア・スタシュケヴィチデヴィッド・ホールバーグ©Erin Baiano上野水香©Shinji Hosono柄本弾©Shinji Hosono

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