eぶらあぼ 2014.9月号
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168CDCDCDCDベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、ソナタ第32番、月光/ファジル・サイブルクミュラー:18・12の練習曲/佐藤卓史ワーグナー:管弦楽曲集Ⅰ/クナッパーツブッシュエトワール/小田桐寛之ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第32番、同第14番「月光」ファジル・サイ(ピアノ)ジャナンドレア・ノセダ(指揮)フランクフルト放送交響楽団ブルクミュラー:18のジャンルの練習曲op.109、12の華麗で旋律的な練習曲op.105、ロンド形式のワルツ「郵便馬車」、幻想的な夢、ディアズの歌劇「トゥーレ王の杯」による華麗なる幻想曲 他佐藤卓史(ピアノ)ワーグナー:《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第1幕への前奏曲、《タンホイザー》序曲、《トリスタンとイゾルデ》第1幕への前奏曲と〈愛の死〉、《パルシファル》第1幕への前奏曲ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団トマジ:トロンボーン協奏曲/リスト:おお、私が眠りにつくときには/スターク:トロンボーンとピアノのための組曲/ネスティコ:リフレクティヴ・ムード/ソルド:エトワール・デ・ミル・イエール小田桐寛之(トロンボーン)小田桐恵子(ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25835 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7760 ¥2500+税TOWER RECORDSPROC-1512 ¥1200+税マイスター・ミュージックMM-2194 ¥2816+税ハ短調と嬰ハ短調の楽曲で構成された曲目の選択自体がユニークだ。ベートーヴェンにおいてこの2つの調性は独特の意味を持つ。これ自体で“確信犯”だが、演奏もまた意識的なものだ。協奏曲では、ノセダのピリオド風味のキビキビした名サポートに乗せて、サイにしてはノーマルなスタイルで弾き進めるが、“ぶっ飛ぶ”のは第1楽章の自作カデンツァ。これは大きな聴きものだ。ソナタ2曲では、第32番第2楽章の文字通りの“プレイ”っぷり、そして「月光」の第3楽章では、曲の器にしては、もはややりすぎでは? というほどのダイナミズムがすさまじい。(藤原 聡)昨年、「25の練習曲」を含むブルクミュラー作品を録音した佐藤卓史が、続編の練習曲集を収録。優しく歌うエチュードで、作曲家がロマン派の時代に活躍した人物であったことを伝える。難易度の上がる「12の練習曲」は粒のそろった音で奏でられ、職人技のような誠実さと、作品と戯れるような自由を感じる。加えてサロン用の小品から、シューマンが高く評価したという「幻想的な夢」や、ブルクミュラー最後の作品など、触れる機会の少ない作品が収められている。シンプルな楽曲に佐藤が好奇心旺盛に挑むことで、実に楽しく、興味深い小品集に仕上げている。(高坂はる香)戦後のバイロイト音楽祭の主柱で、世界最高のワーグナー指揮者のひとりとして活躍したハンス・クナッパーツブッシュが、晩年の1963年にステレオ録音で残した、ワーグナーの管弦楽曲集の第1集。どの曲も、遅めのテンポでじっくりと歌いつつ、おそろしく個性的なリズムの弾力とフレーズの波動で、スケールの大きなクライマックスをつくりあげる。アンサンブルの精度などおかまいなしに、グワンと波うつ音楽で、オーケストラも聴くものも乗せていってしまう力がものすごい。各パートの立体感、遠近感のつくりかたも鮮やかで、余人の追随を許さない独特の境地。(山崎浩太郎)まるでヴェルベットのような肌触りの音色に、歌心あふれる的確なフレージング、そして高度な技巧。「トロンボーンとはこんなに魅惑的で、格好いいものなのか!」。当盤を聴けば、そう感じるはずだ。東京都交響楽団の首席奏者を務める一方、リサイタル活動などを通じて、トロンボーンのソロ楽器としての可能性を掘り下げている小田桐。ソロ・アルバムでは6枚目となる今回、ジャズのテイストが薫る現代の4作品に、リストの歌曲をさりげなく織り込んだ。わが国を代表する名手がまたひとつ、新たな地平を切り拓いた。そう確信するに足る、完成度の高さだ。(寺西 肇)

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