eぶらあぼ 2014.8月号
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54CD『愛燦燦 ~チェロとピアノで聴く ひばりメロディー』日本コロムビア COCQ-85089¥2500+税 8/6(水)発売8/22(金)~8/24(日) 木曽文化公園文化ホール 他問 木曽音楽祭事務局0264-21-1222 http://www.town-kiso.com/music第40回 木曽音楽祭トップアーティストによる室内楽の祭典文:笹田和人昨年の模様左:林そよか 右:林はるか新たに生まれ変わる美空ひばりの名旋律取材・文:宮本 明Interviewアウラ・ヴェーリス(林はるか&林そよか) 音楽を愛する純粋な思いが、結実する場と言えよう。長野の林業の町・木曽で1975年、ヴィオラの巨匠ウィリアム・プリムローズが公開レッスンとコンサートを開いたのをきっかけとして、翌年にスタートした木曽音楽祭。世界的な演奏家の来演などで聴衆を驚かせ、幾度かの危機も地元の人たちの熱意で乗り越えてきた。 40回目の節目となる今年も、ピアノの野島稔や寺嶋陸也、ヴァイオリンの久保陽子や加藤知子、チェロの山崎伸子、オーボエの古部賢一らわが国を代表する名手が集結する。木曽文化公園文化ホールを舞台とする3つのフェスティヴァルコンサートで披露されるのは、シュポアの八重奏曲やフォーレのピアノ五重奏曲第1番(8/22)、生誕150年のR.シュトラウスの弦楽四重奏曲やラインベルガーの九重奏曲(8/23)、弦楽七重奏版のR.シュトラウス「メタモルフォーゼン」に加えて、野島のソロでベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(8/24)など。一線演奏家たちと地元の人々の思いが、ここでまた、ひとつになる。 チェロの姉・林はるかと編曲・ピアノの妹そよかのユニット「アウラ・ヴェーリス」の2作目のアルバムは美空ひばりのインスト・カバー。今年没後25年を迎えた昭和の歌姫の名曲13曲がさまざまな表情で収められている。美空ひばりをリアルタイムで聴いた世代ではない2人はCD-BOXで聴き込むことから始めたという。 (はるか以下H)「ひばりさんの歌のうまさと独特の声の魅力にあらためて驚きました」 (そよか以下S)「曲も素晴らしいんです。Aメロ─Bメロ─サビと、すべての部分が印象に残るのはすごい」 2人の一番のおすすめが〈お祭りマンボ〉。チェロの胴を叩いたり弓でこすったり、打楽器的な効果を加えている。 H「2人でいろいろ試しながらイメージに合った音を入れていきました」 S「伴奏も、不協和音を混ぜながらがちゃがちゃしたお祭りの賑わいを表現しています」 〈リンゴ追分〉では思わぬ効果も体験。 H「原曲のホ短調にこだわりたかったのですが、最低音がH(シ)になって、チェロはC(ド)までしか出ないので弾けない。それでスコルダトゥーラ(変則調弦)で下の弦を半音下げたら、その弦だけなく全体が独特の響きがして心地よくなったのは発見でした」 まったく新しく生まれ変わっているのが〈柔〉だ。柔の道を歌った決然としたいさましい調子の歌が、郷愁さえ感じさせる物悲しく美しい旋律の際立つ小品となった。 S 「最初は原曲なりの雰囲気の編曲で、演奏で少し変えようと思っていたのですが、録音スタジオでやっぱり書き直そうと決心して、調性も和音の付け方もまったく変えて、30分ぐらいで書くことができました。追い込まれたほうがいいものができるタイプです(笑)」 姉妹のアンサンブルのやりやすさは、互いに気をつかわずにすむことだという。 H 「アレンジャーに『この音ちょっと変えたほうがいいんじゃない?』と遠慮なく提案できるのも妹だからこそです」 S「たとえば〈みだれ髪〉は、むせび泣く雰囲気を出したくて、チェロでは弾きにくい、ヴァイオリンみたいな高い音域を使っているので、姉以外の人のためにはなかなか書けません」 2人はこのユニットの特徴を、互いが隠れることなく前面に出ていることだと語る。そんな個性の主張の結果に生まれる、予定調和ではない均衡。アンサンブルの理想形によって、新たな生命を吹き込まれた名旋律たちが自由に飛翔している。

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