eぶらあぼ 2014.8月号
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30 古くから温泉地として知られる群馬・草津を舞台に、若手演奏家を養成する場として1980年にスタート、地元の人や訪問客も共に楽しめるようにコンサートも併せて行うようになった『草津夏期国際アカデミー&フェスティヴァル』。35回目となる今夏も、お馴染みのパノハ弦楽四重奏団やヴァイオリンのウェルナー・ヒンク、クラリネットのペーター・シュミードルら名手が指導やステージに力を注ぎ、小さな町は湯けむりと音楽の響きに包まれる。 コンサートのプログラミングは、特に生誕150年のR.シュトラウスがひとつの核に。オープニング(8/17)では、ポーランドの名匠アントニ・ヴィットが振る群馬交響楽団が登場し、トーマス・インデアミューレをソロに迎えてのオーボエ協奏曲のほか、ドヴォルザークの交響曲第7番や、「花の章」「アダージェット」とマーラーの交響曲からの楽章を添える。また、ピアノのクリストファー・ヒンターフーバーは、シュトラウス若書きのロ短調ソナタにラヴェル「ラ・ヴァルス」、マーラー「ピアノ四重奏曲」断章を併せて披露(8/18)。そして、ヒンクを中心にしたドレスデンゆかりのシュトラウスとヴィヴァルディの室内楽(8/27)や、インデアミューレもシュトラウスの管楽器作品を特集(8/28)する。クロージング・コンサート(8/30)には、パノハ弦楽四重奏団やサシコ・ガヴリロフ、シュミードル、ヒンターフーバーら豪華な顔ぶれが一堂に会し、シュトラウスのピアノ四重奏曲や「メタモルフォーゼン」(七重奏版)、モーツァルトのクラリネット五重奏曲などを聴かせる。温泉と名曲を堪能できる贅沢な2週間となりそうだ。ヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団“使命感”に満ちたマルティヌー・プログラム文:飯尾洋一第774回 定期演奏会 Bシリーズ 9/8(月)19:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp第35回 草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル今年の草津はシュトラウス三昧文:笹田和人8/17(日)~8/30(土) 草津音楽の森国際コンサートホール問 草津アカデミー・チケットサービス0120-949-932/0279-88-7236 http://kusa2.jp 東京都交響楽団のプリンシパル・ゲスト・コンダクター、ヤクブ・フルシャが、この9月、マルティヌーの2作品を並べた意欲的なプログラムを披露する。交響曲第4番とカンタータ「花束」。マルティヌーのみのプログラムを聴ける機会は貴重だ。 これまでにもたびたび屈指の名演を聴かせてきたフルシャと都響のコンビだが、この気鋭の指揮者にとって、欠かせない重要なレパートリーとなっているのが、母国チェコの音楽。日本では十分に親しまれているとはいいがたいスークやマルティヌー作品を果敢に取りあげてきた。今回のマルティヌー・プログラムにもフルシャの使命感が透けて見えるかのようだ。 もっとも、マルティヌーになじみの薄い方であっても、未知の作品に対して過剰に構える必要はないだろう。カンタータ「花束」(日本語字幕付き)には、初めて聴く者にもどこか懐かしさを感じさせるような手触りがある。作品には濃厚な民族色が充満しており、マルティヌー作品のなかでもとりわけ土臭さを感じさせる。フルシャの共感と、都響の機能性、さらに定評ある新国立劇場合唱団と独唱者陣の歌唱によって、精彩に富んだ演奏が繰り広げられることだろう。もう一曲の交響曲第4番では、よりモダンな響きで表現された、豊かな抒情性と祝祭的な躍動感を堪能できる。 マルティヌーの魅力を改めて知る一夜となりそうだ。ヤクブ・フルシャ ©堀田力丸アントニ・ヴィット ©J.Multarzynskiクリストファー・ヒンターフーバーペーター・シュミードルサシコ・ガヴリロフ

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