eぶらあぼ 2014.8月号
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21左から:佐藤正浩/カルロ・コロンバーラ ©Daniel Volker for Opera Actual/佐野成宏 ©稲越功一/浜田理恵サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮) 東京交響楽団北欧から卓越した才能がまた一人文:江藤光紀第623回 定期演奏会 10/4(土)18:00 サントリーホール第47回 川崎定期演奏会 10/5(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp東京芸術劇場コンサートオペラ Vol.2 《ドン・カルロス》強力な布陣で臨むパリ初演版文:宮本 明9/6(土)15:00 東京芸術劇場コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jpサントゥ=マティアス・ロウヴァリ ©Kaapo Kamuマイケル・バレンボイム ©Janine Escher 若手指揮者の台頭が著しい。オーケストラも、豊かな才能の中から自分たちのカラーにマッチした指揮者をいち早く見つけ出したいという思いは強いだろう。 この10月の東京交響楽団では、次の時代を担う才能の競演が楽しめそうだ。フレッシュで切れのよい解釈を聴かせる飯森範親を筆頭に、首席客演指揮者のウルバンスキ(1982年生まれ)、そしてここで紹介するサントゥ=マティアス・ロウヴァリ(85年生まれ)が次々に指揮台へ立つ。 ロウヴァリは、これまた近年多くの指揮者を輩出しているフィンランドの有望株だ。首席指揮者を務めるタンペレ・フィルは、フィンランド湖水地方のタンペレで設立され、すでに80年の伝統を誇る。アソシエーション・アーティストとしてかかわっているタピオラ・シンフォニエッタは同国第二の都市エスポーに本拠地を置く室内オーケストラだ。コペンハーゲン・フィルでは首席 ヴェルディ中期の傑作《ドン・カルロス》(イタリア語では「ドン・カルロ」)に多くの異稿があるのは、オペラ・ファンなら少なからずご存知だろう。現在上演の中心は、1880年代に完成したイタリア語による4幕あるいは5幕の版だが、今回はフランス語による1867年のパリ初演版が日本初演される。のちにカットされたり新たに加えられたりした部分がリセットされているわけで、たとえばオーケストレーションなど、作曲家の十数年間にわたる書法の変遷の混在も解消されるし、たとえ旋律が同じでもイタリア語訳の関係でフ客演指揮者も務め、すでに北欧では名前が知られている指揮者といえる。客演では世界中のオーケストラを振っており、2012年の東響初登場でも大きな反響を呼んだ。 2回目となる今回の共演では「古典交響曲」「ロミオとジュリエット」など、オール・プロコフィエフ・プログラムを聴かせてくれるが、今回もう一つ注目レージングが変わった部分など、聴き知った《ドン・カルロ》とは異なる音楽も聴こえてくる。 フランスのグランド・オペラ形式に則って書かれた大規模なこの作品は、5人の主役級歌手を必要とする。今回はフィリップ2世(バス)にカルロ・コロンバーラを招聘、ドン・カルロス(テノール)に佐野成宏、ロドリーグ(バリトン)に堀内康雄、エリザベート(ソプラノ)に浜田理恵、エボリ公女(メゾ・ソプラノ)に小山由美と盤石の布陣。さらしたいのが「ヴァイオリン協奏曲第2番」を弾くマイケル・バレンボイムだ。ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラのコンサートマスターとしてキャリアをスタートさせているが、現代曲にも鋭いアプローチを見せる。クラシック愛好家なら誰もが知っている父親ダニエルの才能を十二分に受け継いだ新星だ。に、宗教裁判長(バス)の妻屋秀和も加えた、めったに聴けない男性低声歌手の豪華共演が楽しめるのもこの作品の聴きどころだ。指揮は、「パリ初演版にこそ、台本に純粋に向き合ったヴェルディの姿が垣間見える」と意気込みを語る佐藤正浩。プロオーケストラメンバーによるザ・オペラ・バンドを率いて、登場人物たちの心の奥を巧みに描き込んだスコアから、理想的な音楽を引き出してくれるにちがいない。
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