eぶらあぼ 2014.8月号
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150CDCDCDCDマザーランド/カティア・ブニアティシヴィリ森の響き~ドイツ後期ロマン派・ブラームスの魅力/浜松市楽器博物館コレクションシリーズ48ヴァージナル鍵盤音楽名曲集/粟田口節子ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲/シュナイダーハン&ヨッフムJ.S.バッハ(ペトリ編):アリア「羊は憩いて草を食み」/カンチェリ:映画「アーモンドの花咲くとき」/リゲティ:ムジカ・リチェルカータ第7番/グリーグ:郷愁/グルジア民謡(ブニアティシヴィリ編):あなたは私を愛していないの?/ペルト:アリーナのために 他カティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ)◎ブラームス: ヴァイオリン・ソナタop.78 4つのクラヴィーア小品集op.119 ホルン三重奏曲op.40小倉貴久子(フォルテピアノ)桐山建志(ヴァイオリン)塚田聡(ナチュラルホルン)バード:ネヴェル夫人のためのヴォランタリー、ローランド、ガリアード、ラ・ヴォルタ、この道をゆく人は/ファーナビー:トイ、ケンペのモリス 他粟田口節子(チェンバロ、スピネット、ヴァージナル)ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)オイゲン・ヨッフム(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ソニーミュージックSICC-30172 ¥2600+税コジマ録音LMCD-1995 ¥2900+税ナミ・レコードWWCC-7757 ¥2500+税TOWER RECORDSPROC-1444 ¥1143+税 情熱的な演奏と妖艶な容姿で人気を集めるブニアティシヴィリが、この「マザーランド」で一味違った顏を見せる。バッハ=ペトリ「羊は憩いて草を食み」に始まり、リゲティ「ムジカ・リチェルカータ」や姉との連弾によるドヴォルザークの「ドゥムカ」、自身の編曲によるグルジア民謡などを、内心を吐露するように、やわらかく熱く紡いでゆく。その音楽は彼女がライナーノーツで暗示するように、母の胎内にいるような温かささえ感じさせる。最後に置かれたペルトは神々しいまでの輝きを放つ。注意深く並べられた小品同士が呼応し合い、作品に潜む新たな魅力を見せてくれるアルバム。センスが光る。(高坂はる香) 所蔵のピリオド楽器を用いてその時代の響きを聴かせる、浜松市楽器博物館の意義深い連作。ブラームス自身も愛奏したというナチュラルホルンによるホルン三重奏曲では、音程を変えるためのゲシュトップ(ベルの中の右手の操作)に伴う音色の多様なくぐもりが旋律の陰影となって、聴きなじんだ名曲から未知の表情を引き出している。バルブを使った演奏にはない個性。使用楽器の製造年は、ホルン1841年以前、ピアノ1885〜90年、ヴァイオリンは桐山の個人所有で1925年製。各奏者による解説も読み応えがある。ホルン協会の一員として写ったブラームスの写真はレア。(宮本 明) エリザベス朝の時代に黄金期を迎えた、イギリスの鍵盤音楽。当盤には巨人ウィリアム・バードを中心に、ファーナビー、ピッキ、トイら、華やかな隆盛を形創った作曲家たちの佳品が、チェンバロ、スピネット、ヴァージナルと3つの名器を弾き分ける形で収録されている。楽器の選択の意図については奏者自身による解説に詳しいが、その音色の明確な色彩の違いは、アルバム内へ絶妙なアクセントをもたらす。粟田口の演奏自体は、決して奇を衒うことのない正攻法。その一方で、楽曲ごとに微妙に異なるディテールやニュアンスを、真摯かつ丁寧にすくい取ってゆく。(寺西 肇) シュナイダーハンとヨッフムによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と言えば、1962年にベルリン・フィルを伴って録音したものが、今も名盤として君臨している。しかし、この3年前の59年にも同じコンビで録音されていたことは、余り知られていない。この“幻の録音”を今回、初CD化。62年盤に聴く、きびきびとした印象とは違い、この録音はテンポの揺れが大きく、より甘美な印象。作曲者自身がピアノ協奏曲へと編み直す際に書いたものをシュナイダーハンが編曲したカデンツァも、微妙に細部の仕上げが異なる。併録のバッハの無伴奏パルティータも、時代を超越した名演だ。(寺西 肇)
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