eぶらあぼ 2014.8月号
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148CDCDCDCD BD浅井咲乃(ヴァイオリン)の「よろこび」と「かなしみ」祖母の子守うた~林光作品集/佐山真知子高橋アキ プレイズ エリック・サティ1シューマン:交響曲全集/ラトル&ベルリン・フィルクライスラー:中国の太鼓、愛の喜び、愛の悲しみ、美しきロスマリン/ブロッホ:バールシェム/エルガー:愛の挨拶/ディニク:ひばり/ポンセ:エストレリータ 他浅井咲乃(ヴァイオリン)延原武春(指揮)テレマン室内オーケストラ林光:つまさききらきら、二月、クリークの子守唄、あらしの歌、オコジョのダンス、ハナコ症候群、小さな恋、祖母の子守うた 他佐山真知子(ソプラノ)通崎睦美、藤井里佳(マリンバ)服部真理子(ピアノ、鍵盤ハーモニカ)サティ:グノシエンヌ第1番~第7番、ジュ・トゥ・ヴー、ジムノペディ第1番~第3番、「星たちの息子」への3つの前奏曲、貧しき者の夢想、ワルツ=バレエ、ヴェクサシオン(部分) 他高橋アキ(ピアノ)◎シューマン:交響曲第1番~第4番サイモン・ラトル(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ナミ・レコードWWCC-7758 ¥2500+税コジマ録音ALCD-9142 ¥2800+税カメラータ・トウキョウCMCD-28305 ¥2800+税※CD2枚+96kHz/24bitの音声トラックとコン サート映像等を収録したBlu-ray収録:2013年2月,11月、ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ)キング・インターナショナルKKC-9083(CD2枚+BD1枚) ¥9000+税 半世紀以上の歴史を持つ、テレマン室内オーケストラ。ふだんは古楽器での演奏だが、今回は現代楽器を使用。当盤はコンサートマスターとして腕を揮う若き実力派のソロ盤だ。収録曲に並ぶのは、クライスラー、エルガー、マスネ、モンティ…。定番のヴァイオリン小品集と思いきや、これがとんでもない。研ぎ澄まされた歌心とリズムを基調にしつつ、上品なポルタメントを効果的に織り込むことで、実に細やかで多彩な“よろこび”と“かなしみ”を描き出すことに成功している。しかも、伴奏はすべて管弦楽編曲版。聴き慣れた名曲の感動を様々な角度から刷新してくれる1枚だ。(渡辺謙太郎) 2012年に急逝した林光のソング集。林のソングは、彼自身によれば「玄人だろうが素人だろうが相手をえらばないしたたかさをそなえたウタ」だ(楽譜『林光・歌の本』(一ツ橋書房刊)まえがき)。佐山はこんにゃく座での活動など、長く林と共働した歌い手。透明な声とストレートな歌いくちが旋律を丁寧にすくい取る。冊子に歌詞が掲載されているのは沖縄の言葉で歌われている4曲のみだが、佐山の歌は日本語が明瞭だし、文字の情報に頼らずに歌声に注意深く耳を傾けたほうが、歌の意味や形をはっきりと感じとれるだろう。マリンバや鍵盤ハーモニカの伴奏がやさしい。(宮本 明) 遂に、と言うべきか。高橋アキがサティの再録音を始めた。冒頭曲の「グノシエンヌ第1番」を聴いて感じるのは、意外な情感の深さと陰影の濃さ。旧録音はよりシャープでクールな印象があったので、この差は大きい。恐らく旧録音は現代音楽のスペシャリストである高橋が、ミュージック・コンクレートやケージへ連なって行くような「サティの現代性」について意識的に振舞った結果とも思えるが、当録音では、肩肘張らずにサティをあくまで「音楽」として扱っている。これは優劣の問題ではないが、その「異なり方」が大いに興味深い。時代と誠実に「切り結ぶ」。(藤原 聡) ベルリン・フィルの自主レーベルによる記念すべきリリース第1弾。CD2枚、ブルーレイ1枚、そしてブックレットなどを美しいケースに収めた豪華なパッケージは、一見しただけでもこのアルバムが特別なものであることがわかる。ラトルは「シューマンの交響曲は我々の中核的レパートリーです。我々のシューマン作品へのアプローチは独特かつ独自の主張があります」とコメント。そのユニークさを映像とCDおよびハイレゾで味わうことができるのはこのアルバムならでは。近年リリースされたシューマンの交響曲全集の決定盤の一つになることは間違いないだろう。(大塚正昭)
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