eぶらあぼ 2014.7月号
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44モルゴーア・クァルテット 第40回定期演奏会6/26(木) 14:00/19:00 浜離宮朝日ホール問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638http://www.millionconcert.co.jpCD『原子心母の危機』日本コロムビアCOCQ-85066¥2800+税8/7(木)11:30 第一生命ホール問 トリトン・アーツ・ネットワーク・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net昼の音楽さんぽ 第18回 北村朋幹 ピアノ・リサイタル想い溢れるピアノの「アリア」文:飯田有抄荒井英治(ヴァイオリン/モルゴーア・クァルテット)4つの弦で奏でる“ロック魂”取材・文:東端哲也Interview 第一生命ホールでランチタイムの1時間を過ごすコンサートシリーズ「昼の音楽さんぽ」に、ピアニストの北村朋幹が登場する。14歳で東京音楽コンクールの覇者となり、現在はベルリン芸術大学で研鑽を積む北村。日本で演奏会が開かれるたびに、その研ぎ澄まされた感性と集中力、高い志、そして明快なプログラミング・コンセプトで注目されている。今回のプログラムのテーマは「アリア」。ピアノで歌う一曲目はショパンのノクターン第16番。そしてベートーヴェンのソナタ第31番、第3楽章は「嘆きの歌」と呼ばれる声楽的な音楽だ。有名なバッハ=コルトーの「アリオーソ」に続き、最後にブラームスの「幻想曲集op.116」が用意されている。北村は「4曲とも心が本当に開いていないと弾けない」、とくにブラームスの音楽は「心の伝えなくてもいいような部分まで見えてしまう音楽」と語る。想い溢れるピアノの「アリア」にじっくりと耳をそばだてたい。 東京フィルのコンマス、荒井英治が参加している弦楽四重奏団「モルゴーア・クァルテット」によるプログレッシヴ・ロック集の第2弾『原子心母の危機』は今回もキング・クリムゾン、ピンク・フロイド、ELP、イエス、ジェネシスの5大バンドに絞った鉄壁の選曲で唸らせる。「二番煎じになってしまうのを避けるために、敢えて困難に挑むような選曲に。それで真っ先に思い浮かんだのがストリングスのイメージからは程遠いイエスの『危機』。ピンク・フロイドの大曲『原子心母』もクァルテットにそのまま移すようなことはナンセンスと思いつつ、何とか再構築できないものかと悩んでいました。この曲は日本のプログレ・シーンに多大な影響を与えましたし、曲のタイトルは今の僕には原子力、それも福島の未曾有の事故に結びついています。しかしそのイメージを無理に自分から廃除しないことで、やっと再構成するポイントが見えてきたんです」 前作『21世紀の精神正常者たち』のリリース後、ライヴでの反響も大きく、曲の終わりには客席がロックコンサートのような総立ちになることもしばしば。若いオーディエンスの数も増えてきているという。 「本来、当時の最新テクノロジーを結集して、クラシックや民族音楽、ジャズなどを統合して生まれた創造性溢れる音楽がプログレ。僕自身ワクワクするような高揚感を味わって聴いていたので、その同じ感覚を僕らの演奏からも感じてもらえたら嬉しい。僕らにしてみれば、クァルテットのレパートリーという点ではベートーヴェンやショスタコーヴィチと同じ位置づけになりつつあります。バッハの曲を演奏するのに、たとえ当時とは異なる現代の楽器を使ったとしても、そこにバッハの思想や様式美が息づいているのと同様に、2本のヴァイオリンとヴィオラ、チェロからなる4つの楽器で、ロックの本質“ロック魂”を奏でられたらと思います。プログレの古典名曲には時代を超える普遍性と、人を魅了する表現の豊かさとストレートさがあるので」 新曲として、ELPのキース・エマーソンが東日本大震災の直後に書き下ろしたという「ザ・ランド・オブ・ライジング・サン」を本人から編曲を勧められ、ラストを飾る曲として収録しているのも聴き所。クラシック界の実力派弦楽四重奏団にして、まるで“オヤジ系ロックバンド”のような熱いスピリットを持つ4人組だ。 アルバム収録曲とショスタコーヴィチやリゲティを演奏する6月の“ライヴ”も大いに盛り上がることだろう。後列左から:小野富士(ヴィオラ)、藤森亮一(チェロ)前列左から:荒井英治、戸澤哲夫(共にヴァイオリン)

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