eぶらあぼ 2014.7月号
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39シェーンベルク ピアノソロ作品全曲シリーズシリーズ1(ピアノソロ)8/30(土) 16:00 ベーゼンドルファー東京展示サロン問 ベーゼンドルファー東京03-6681-5189※シリーズ2~4の詳細は下記公式ブログでご確認ください。http://ameblo.jp/chiharu-sudoCD『ジェム』 日本アコースティックレコーズ NARD-5047 ¥3000+税7/30(水) 19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp紀尾井 明日への扉5 岡本侑ゆうや也(チェロ)フレッシュな感性が冴える個性的な演目文:渡辺謙太郎寺嶋陸也岡本侑也ピアノ作品の“宝石”をちりばめて取材・文:飯田有抄Interview須藤千晴(ピアノ) 近年、才能溢れる若手実力派を続々と輩出している日本のチェロ界。2011年に若干17歳で日本音楽コンクールを制し、現在ミュンへン音大に留学中の岡本侑也もそんな有望株の一人だ。 当公演は、今注目の若手に光をあてる人気シリーズの第5回。演目には、19世紀ドイツ(ベートーヴェン「ソナタ第3番」&シューマン「幻想小曲集op.73」)と、20世紀フランス(デュティユー「ザッハーの名による3つのストローフェ」&プーランク「ソナタ」)の個性的な傑作が並ぶ。岡本の持ち味は、高度な演奏技術を持ちながらも、それをひけらかすことがない自然体のアプローチ。ベートーヴェンの情熱と緊張、シューマンのノスタルジー、デュティユーの色彩と抒情、そしてプーランクのシニカルな微笑みを、徹底してノーブルに歌い上げることだろう。しかも今回の共演ピアニストは作曲と演奏の両面で経験豊富なベテラン、寺嶋陸也。まさに「竜に翼を得たる如し」、期待せずにはいられない。 「ジェム gems 」とは宝石のこと。一粒ごとに、そして見る角度によって宝石は多彩な輝きを放つ。須藤千晴の新譜『ジェム』は、まさにピアノ作品の“宝石”をちりばめている。ドビュッシー、リスト、メンデルスゾーンの作品群から9曲を選んだ。 「どれもいわゆる『大曲』ではないけれど、私が過去10年間にステージ上で演奏を重ねてきた『逸品』ばかり。曲順は作曲家ごとにまとめるのではなく、それぞれの終わりと開始の音の関係で並べています。逸品の新しい輝きを感じていただけるのではないでしょうか」 東京芸大を卒業後ベルリンで研鑽を積み、現在はソロリサイタルのほか室内楽コンサートにも力を入れて活躍中の須藤。そんな彼女にとって「音色を追求する上で、とてもしっくりくる作曲家はドビュッシー」だと話す。アルバムでは「月の光」を冒頭に置き、「ドビュッシーとしては珍しく強音で終わる曲」として「喜びの島」、「ちょっとお腹がいっぱいになるアラカルト」として「版画」全3曲も収めた。音の粒立ちが見事な「雨の庭」では巧みなペダル使いが感じられる。 「最近ペダリングの工夫にハマっています。ダンパーがほんの少しだけ上がるようにギリギリの浅さでふむと、濁らずに美しく繋がる響きになります。精密なペダル操作をしたくて、レコーディングは裸足で行いました」 リストの「ラ・カンパネッラ」は「打楽器的な『鐘』の響きよりも、ピアノで奏でる美しく悲しい『鐘の響き』を意識してみました」と語る。さらにリストはシューマンの歌曲に基づく「献呈」、そしてアルバム後半に「愛の夢」第3番も含むが、須藤の演奏は甘いだけに留まらない。 「『愛の夢』の『愛』とは『人間愛』であると知り、太く芯のある音、チェロのような音色をイメージして弾きました。『男性的な音色ですね』と言われることもあって嬉しく感じています」 メンデルスゾーンは「ロンド・カプリチオーソ」、そしてアルバムの締めくくりに「スコットランド・ソナタ」を置いた。 「非常に技巧的な作品ですが、重厚な響きというよりも、とてもスマートでお洒落。メンデルスゾーンはさらりと巧みなことをやってしまう作曲家ですね」 8月から来年2月にかけては、シェーンベルクのソロと室内楽を含むピアノ作品全曲演奏会を予定。「耳が研ぎすまされるような作品ばかり。共演者も豪華ですので楽しみにしていてください」と澄んだ瞳の奥に意欲を覗かせる。

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