eぶらあぼ 2014.7月号
183/197

236原田薫ソロ『モノクローム』『バベル BABEL (words)』伝説のステージが待望の再演オリバー賞と最優秀振付ブノワ賞を受賞した話題作!文:小野寺悦子文:乗越たかお 日本を代表するジャズ・ダンサーのひとりであり、振付家として幅広い活躍を遂げる原田薫のソロ公演『モノクローム』が、早くも待望の再演を実現! 2013年12月に開幕した初のソロ公演のチケットは即日完売。追加公演も瞬く間に売り切れるなど、ダン 本作の振付は、いま世界でも最も人気のある振付家の一人、ベルギーのシディ・ラルビ・シェルカウイである。アクラム・カーンとのデュオ『ゼロ度』や、手塚治虫をテーマにした『テ ヅカ TeZukA』など、これまでも来日公演は多く、幅広くファンを獲得している。この作品は札幌国際芸術祭2014のゲストディレクターである坂本龍一が自ら選んだことでも話題になった。 シェルカウイ作品の特徴は、本人の卓越した身体能力に加え、美しくも意表を突く優れた美術と演出、そして胸に染み渡るように響く歌など、五感をフルに刺激する点である。共同振付のダミアン・ジャレはシェルカウイの昔からの盟友で、身体の利き方も素晴らしく、息の合った演出ぶりが楽しみだ。 シェルカウイ自身はここ数年、少林寺の僧侶やスペイン舞踊とコラボレーションしたり、様々な国の伝統文化と関わりの深い作品をいくつも創ってきた。そういう流れで見るとこの『BABEL(words)』は、「人の言葉が分かれ、多様な文化を生み出す大本の話」だといえる。本作に様々な国籍の老若男女が登場するのも、さながら世界の縮図のようだ。彼らが力を合わせ、まるでひとつの生命体のように動くシーンは見物である。ス界の注目を一身に浴びた伝説のステージが、ファンの熱い声に応えこの夏、再び幕を開ける。 舞台上で描かれるのは、あるひとりの女性の物語。大切なひとからの便りを待ち焦がれる日々、胸を引き裂く辛く厳しい現実、打ちひしがれこぼれ落ちる涙…。ジャズダンスに、芝居、歌と、着実に築き上げてきたスキ 舞台装置にはビジュアル・アーティストのアントニー・ゴームリーによる5つの大きな直方体のフレームが使われる。これが様々に移動しては組み合わされ、時に山のように、あるいは都市のように、そして塔であり個人のパーソナルスペースのように、闊達に空間を切り取っていく。 タイトルはいうまでもなく、旧約聖書の創世記に出てくる「バベルの塔」にちなんでいる。神に挑む高い塔を建設しようとした人々が神の怒りに触れ、互いの言葉を理解できなくされてしまう。雷や洪水といったハード面の7/6(日) 梅田芸術劇場シアタードラマシティ問 梅田芸術劇場 06-6377-3888 http://www.umegei.com/schedule/382/他公演 6/17(火)~6/22(日) シアターブラッツ 問 踊心 03-6416-3352  7/4(金) 広島アステールプラザ (中) 問 TSS事業部 082-253-10108/29(金)~8/31(日) 東急シアターオーブ問 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 http://www.tbs.co.jp/event/babel2014罰ではなく、言葉(words)というソフト面を封じられただけで、それまで一丸となって頑張っていた人々は世界中に離散してしまい、塔の建設は放棄されてしまうのだ。 平和を願わぬ者はいないのに、なぜ世界は争いに満ちているのか…… 言葉によって人は理解し合うことができるのだが、同時に言葉によってこそ憎しみや不信感が醸成されていく。諸刃の剣なのだ。それでも人は信じる努力をあきらめることはない。ダンスをもってそこに斬り込む2人の共作を、ぜひとも目撃してほしい。©Koen Broosルのすべてをステージへと凝縮。長年にわたり日本ジャズダンス・シーンを牽引し、第一線を走り続けてきた原田薫の集大成がここにある。 今回は、東京のほか、広島、大阪を加えた3都市での開催が決定。原田薫のキャリアを余すことなく投影したソロ・パフォーマンス、その確かな魅力をしかと見届けてみたい。©Mariko Matsubayashi

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です